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【INTERVIEW|有力事業者に聞く】
今野晃広氏[GOLFZON Japan 代表取締役]
コロナ禍は業界に何をもたらしたのか
アフターコロナ見据えたインドアゴルフの価値

  • レジャー産業
  • インドアゴルフ
  • シミュレーター
 ゴルフシミュレーター先進国である韓国に本社を置くGOLFZON。同社が開発するシミュレーターは、アジアを中心として世界63か国に約3万台が導入されている。GOLFZONが日本市場の窓口として、2009年に設立したのが、GOLFZON Japan梶B国内におけるゴルフシミュレーターのリーディングカンパニーとして市場を牽引している。
 代表取締役の今野晃広氏に、コロナ禍以降のインドアゴルフの動向や今後の需要予測などについて伺った。
中上級者向けのハイスペック。日本選手権大会の会場にも
 アフターコロナでより高まるインドアの存在価値GOLFZON Japanは、ゴルフシミュレーター販売、インドアゴルフ店舗運営、オンラインサービスを展開しています。
 国内でのゴルフシミュレーターの延べ導入実績は約2,000台で、コロナ禍以降、加速度的に増加傾向にあります。現在、取り扱っているのは3機種です。1つは、インドア練習・レッスンに特化した新世代ゴルフシミュレーター「GDR」で、ハイスピードカメラで細かいデータを拾い、緻密なショット分析により、スキル向上を実感できるものです。GDRは全米女子プロゴルフ協会の公認機種でもあります。
 そして、ラウンドプレイに特化した「VISION」では2機種を展開しています。「T2VIS IONPLUS」はGOLFZONのスタンダードモデルで、「VISIONPLUS」は長い開発期間とツアープロの協力により高い完成度を実現したGOLFZONの最高機種です。
 インドアゴルフとしては、いまから10年ほど前にゴルフバーのブームがありましたが、当時は飲食を伴うなど、ゴルフをエンターテインメントとして楽しむ傾向が強かったと思います。しかし現在は、スポーツとしてゴルフそのものを楽しむ、または技術を習得するための場としての利用傾向が高いと感じています。たとえば充実したレッスンプログラムが揃っている施設や24時間営業の施設、さらにはゴルフ未経験者を対象としたスクール主体の店舗など、それぞれの運営スタイルに合わせて、シミュレーターが活用されています。
 昨今のゴルフブームの影響もあり、インドアゴルフ施設の開設に関する相談もふえています。インドアゴルフ施設の開設には初期投資が相応にかかりますが、人件費、食材などの在庫負担などのランニングコストは他の業態と比較するとかなり抑えられます。そのため、収益性の高い事業として注目される方が多いのではないかと思います。経営者ご自身がゴルフ好きで、趣味と物件の有効活用を兼ねて業態変更するケースもみられます。
国内で延べ約2,000台の導入実績を誇る
 また利用者側の傾向として、これまで海外旅行に出掛けていた方がコロナ禍で行かれなくなった。その時間とお金を使って、三密を避けられるスポーツでもあるゴルフをはじめた、という方が相当数いらっしゃいます。
 一方で、アフターコロナになり再び海外旅行に行きやすくなれば、ゴルファーは減少するとも考えられます。といっても、積極的にやめたいわけではなく、ゴルフ場に行く時間と費用などが要因でしょう。したがって、せっかくゴルフをはじめた人を離脱させないためにも、手軽で身近に楽しめるインドアゴルフ施設が果たす役割は、これまでに以上に重要になるでしょう。
 近隣にそれぞれの需要を満たす機能を備えたインドア施設があれば、完全に離脱することなくゴルフにとどまっていただけるはずです。つまり、コロナ禍によって需要の高まったインドアゴルフ市場は、アフターコロナにおいてますますその存在価値が高まるのではないでしょうか。
 また市場拡大の要因は、新規ゴルファーだけではありません。高齢になって自動車免許を返納し、ゴルフをやめていた方が、インドアゴルフに来てくださるという話をよく聞きます。健康維持にもつながっているという声も頂戴しますし、インドアでゴルフを再開したことで身体機能が改善して、コースに復帰された方もいるそうです。ゴルフは生涯スポーツといわれますが、インドア施設は、健康寿命延伸という意味でも一層重要になっていくのではないでしょうか。
さまざまな業種・業態に広がるシミュレーター
 インドアゴルフの存在価値が高まるということは、シミュレーターを提供するわれわれメーカー側の役割も重要になるということです。
 当社のシミュレーターは、トッププロにも評価いただいているボールの表現力など、シミュレーターとしての性能、プレイされるお客様の満足度の高さで支持いただいていると思っています。当社以外の各メーカーの機種にも画像による解析機能をはじめ導入コストの優位性など、それぞれの特徴があります。インドアゴルフがより発展するには、幅広いニーズに対応できる多種多様なシミュレーターが市場に揃い、選択肢が広がることが必要でしょう。多くのメーカーが参入して競争することで、市場が成熟することは、今後のゴルフ業界の発展にとっても重要な要素だと思います。
新世代ゴルフシミュレーター「GDR」
 そして、シミュレーターの活用は、ゴルフ関連施設にとどまりません。すでにさまざまな業態に広がりをみせつつあります。当社ではフィットネスクラブや他の業種との融合を少しずつ進めています。ホテルの宴会場をリノベーションしてシミュレーターを導入するところもあれば、企業の福利厚生の一環で工場内の遊休スペースに導入したいという相談もいただいています。少子化によって空いている校舎にシミュレーターを導入して、ゴルフアカデミーをつくることを検討している自治体もあります。生涯スポーツという点では、高齢者施設への導入例もあります。
 インドアゴルフ事業への新規参入にあたり、少しアドバイスをさせていただきますと、ゴルフシミュレーターは本コースで実践するための練習ツールとしてはもちろん、先に述べたように飛距離や弾道データ、スイング画像チェックなど、多くの機能が組み込まれており、初心者から上級者まで楽しむことができます。施設利用者の属性や個々の目的を的確に把握することで、内蔵された機能は有効に活用され、かつ利用者の満足度と施設の魅力づくりにも寄与するでしょう。
また、空間活用の視点として、余裕のあるスペースで提供することをお勧めします。業態変更などで、ギリギリでドライバーをスイングできるというケースもありますが、物理的に必要なスペース+αの余裕のあるほうが、利用者は安心できるため継続性が高いようです。
たとえば当社のVISIONの場合は、天井高2・8mからご利用いただけますが、身長の高い方もおられますので、3m以上を確保したほうがよりよい環境でプレイしていただける、と提案させていただいております。
もう1つ、注意いただきたいのは音の問題です。初期投資に関わることではありますが、後々建物のオーナーや他のテナントとの間で大きな問題になる事例もありますので、防音対策には十分に配慮されることをお勧めします。また、都市部で増加傾向にある24時間営業についてもエリア競合など事前のマーケティングは欠かせないと思います。
最後に、今後の当社の構想について少しご紹介します。
まずシミュレーターについては、今年2月の国際大会で使用した新機種を商品化すべく、秋ごろの発売に向けて準備を進めているところです。将来的にはAIを活用したレッスン機能も盛り込みたいと思っています。また、よりゴルファーに寄り添い、ゴルフへの参入を促進できるアイテムを提供していきたいとの思いから、小型の弾道計測器や、パソコンとテレビを利用して自宅の室内でプレイできるような仕組みづくりも考えています。
<そのほかの事例研究は本誌にて>
[プロフィール]
今野晃広(こんのあきひろ)
太平洋銀行に入行後、テーラーメイドゴルフ鰍ノ入社。20年以上務めた後に、2016年1月GOLFZON Japan椛纒\取締役に就任。
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