林
一番重要なのは、コロナ禍によりこの業界はかなりの数の従業員を放出してしまったということです。結果的に「不安定な職種」というイメージを生んでしまい、今後は賃金を上げても人材が戻ってくるのはむずかしいでしょう。業界はお客さまが戻ってきても人手が足りないという問題に直面するなかで、DXの推進や自動化でカバーすることが求められます。正確には、「人手不足の補填」というより「新しいサービス形態の創造」を考えざるをえなくなるでしょう。
私たちは「ホスピタリティサービス工学」という視点から、ホスピタリティにこそ人の労力を注ぎ、これと無関係な作業はロボット等で自動化していくという考え方をとります。いままで漠然と「サービス」とひと括りにしていた業務を「ホスピタリティ接点」と「作業」とに明確に分け、自動化できる作業は自動化していくことが必要です。
その自動化に際しては、「その作業が機械に可能か」という技術的課題と、「機械化にどの程度コストがかかるか」という価格的課題があります。そこで私たちは技術的課題の解決に向け、沖縄に「ホテルDXラボ」ともいうべき実験ホテル「タップ ホスピタリティ ラボ沖縄」(以下、THL)を建設中で、2022年11月に完成、23年4月から本格稼動の予定です。ここでさまざまなメーカーやホテル関係者の参画を得て実証実験を行ない、そこで得たデータを業界に提供していきます。価格的課題の解決については、自動化技術を開発・提供するメーカーがマーケットの母数をどう見るかにかかっています。私たちはニーズをメーカーに伝えるデータ提供を行なっていく考えです。
ポストコロナ時代にあっては、DXや合理化・自動化は確実に加速します。誤解を恐れずいえば、コロナ禍はイノベーションの機会となったとも考えています。