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【事例研究】ゴリラクリニック
巧みなブランディングで通いにくさを払拭した
「男性向け美容クリニック」の先駆け

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行き場のなかった男性の美容ニーズに応える

 「ゴリラクリニック」は、「男性美容のシンボル」をミッションに掲げ、2014年10月に東京・池袋で創業した男性専門の総合美容クリニック。以降、現在まで都市部を中心に札幌から福岡まで全国に19院を展開する。
 創業した当時、美容医療はほぼ女性向けオンリーで「男性向け美容医療」という領域は未開拓であった。なぜ、そんな未知の領域に足を踏み出したのか。
 「周囲の目は総じて懐疑的でしたが、大手家電メーカーの男性向け美容家電が大ヒットしていたこともあり、治療を受けられる場がないだけで、外見を気にし、改善したいという男性が少なからず存在するという確信めいたものがありました」(総院長 稲見文彦氏)。
 当時、外見上の悩みを抱える男性にとっては、メンズエステか女性向けの美容クリニックしか選択肢がなかった。女性以上に効果やエビデンスにこだわる男性にとって、医療機関ではないメンズエステでは期待ほどの効果を得ることができず、女性ばかりの美容クリニックは人目が気になり入りにくい。そんな行き場のない男性のニーズに応えたいと考え、開設されたのがゴリラクリニックであった。

内装、ユニフォームを黒で統一。19 院で1日1,500人が来院

 クリニックは、主な利用者層として想定する20歳代、30歳代の会社員が通いやすく、なおかつ人的リソースを確保しやすい都市部の事業用ビルの中高層階に入居。待合スペースは黒を基調とした内装が特徴的で、医師やスタッフのユニフォームも黒で統一するなど「男性らしさ」を追求する。
 院内はその待合スペースのほか、カウンセリングルーム5~10室(クリニックにより異なる)、治療室、パウダールームなどで構成。待合スペースにはWi-Fi環境を整備するほか、大阪にある大阪梅田院では充電器を備えたワークスペースも設置する。
 スタッフは医師2~4人のほか、看護師とカウンセラーが各10人前後という体制。いずれも男性スタッフが複数名在籍しているのも特徴だ。
 メニューは、脱毛、スキンケア、薄毛、ワキガ・多汗症、痩身など男性が抱えるあらゆる悩みに対応。痩身だけでも内臓脂肪、皮下脂肪、腹直筋肥大など、3つのメニューを用意する。治療室には脱毛用をはじめ、シミやたるみをとる各種レーザー、ワキガ、薄毛、ニキビ用のほか、皮下脂肪を凍結させて減らす痩身用機器など、医療機関ならではの機器を多数揃える。
 治療費は、ヒゲ脱毛完了コース7万4,800円、ニキビ治療・ニキビ跡治療9,800円、メディカルダイエット2万6,800円、わきが・多汗症治療6,900円(月額・60回払い)などで、ヒゲの脱毛目的の患者が過半数を占めるという。
 「来院動機は、ヒゲが濃いという外見上のコンプレックスを抱えている方がほとんどですが、なかには毎日のヒゲ剃りが面倒という方や剃刀負けにより痛々しいお顔で来院される方もいらっしゃいます。コロナ禍でマスク着用が常態化したことから、ヒゲを剃らない方が増加した一方、『この機会に脱毛を』と考える方も多いようです」(稲見氏)。
 メンズエステでも脱毛は人気メニューの1つだが、ゴリラクリニックのような美容医療との違いはどこにあるのか。「エステサロンの脱毛は一時的な『減毛』で、一定期間が経過するとまた毛が生えてきます。医療用のレーザー機器を使い永久脱毛まで可能なクリニックの脱毛とは根本から違うのです。まして、ヒゲは体毛のなかでも太く硬い、われわれ医師でも手こずる部位ですから、エステでは期待した効果が得られないとして、当院にお越しになる方も少なからずいらっしゃいます」と、稲見氏はエステサロンとクリニックの明確な違いを強調する。
 昨年の1度目の緊急事態宣言時(20年4、5月)こそ患者数は一時落ち込んだものの、6月以降は回復、現在はコロナ前を上回る来院数を数え、19院合計で1日1500人、1か月で4万5000人が来院。予約待ちが続出するほどの盛況だ。
 こうした盛況について稲見氏は、「男性はそもそも自身の顔を客観的にみる機会は女性に比べあまり多くありません。しかし、コロナ禍でのオンラインミーティングなどにより、自身の顔を見る機会がふえたことで、『自分はこんな顔をしているのか!?』とショックを受け、自身の外見をどうにかしたいと考える方がふえました。また、在宅勤務により通勤の負担がなくなったことでコロナ太り"に悩む人も増加傾向にあり、医療痩身を希望される方がふえたこともここ1年での傾向です。また、この1年、旅行や外食、レジャー消費を控えた分が『自分磨き消費』に向かったのではないでしょうか」と話す。

セミナーやノベルティ開発で患者との交流にも意欲的

 患者の年齢層は20歳代、30歳代が7、8割を占めているが、40歳代、50歳代も増加しているという。数は少ないものの就活目的の大学生や親同伴の高校生などの姿もあるという。40歳代、50歳代は薄毛のほか最近では介護期に備え陰部の脱毛を希望する患者がふえている。
 「男性の価値は外見だけでは決まらない」(稲見氏)と考えるゴリラクリニックでは、ビジネスパーソンが主な利用者層であることから、患者限定の「ビジネスセミナー」も定期的に開催。ハンドタオルやチョコレートなどバレンタイン時期にはオリジナルのノベルティグッズも開発するなど、クリニックと患者の交流にも意欲的だ。美容クリニックは「お忍び」で通うイメージがあったが、「男性向け」かつ「ゴリラクリニック」というネーミングなどのブランディングが奏功し、「通いにくい」という美容クリニックの長年の課題を解消。現在ではクチコミや患者からの紹介で来院する患者も多いという。クリニックがもつ20歳代、30歳代男性を吸引するパワーはビルオーナーにとっては魅力的だろう。
 ゴリラクリニックの成功で、「男性向け美容医療」というカテゴリーが確立され、ここ数年でこれに追随する動きも出てきた。同院では、今後も首都圏を中心にさらなる開院を検討しているという。
(ほか「セルフエステ」「まつエク/アイブロウ」「ドライヘッドスパ」など全10事例の経営実態は本誌にて)
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