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天然温泉 満天の湯 ポストコロナ:ニューノーマル時代における
日帰り温泉施設の勝ち方を積極的に追求

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既存客の来店頻度を上げ、新規を取り込むイベントを展開

 相鉄線「上星川」駅南口にほぼ隣接するモリヤマビル2、3階に展開する「天然温泉 満天の湯」は、東海道の宿場町を想起させる空間に15種類のお風呂や3種類のサウナをはじめ、食事処、カットサロンなどを備え“毎日行きたくなるおふろやさん”を標榜する。不動産賃貸業を手がける潟c潟с}が、グループ子会社を通じ捺染事業や電子部品製造業(いずれも現在は廃業)とともに取り組む温浴事業として、潟~ューが運営している。
 2005年6月のオープンから約15年経つものの、国内最大規模の温泉・スパ情報専門メディア「ニフティ温泉」の“年間ランキング2020”で全国総合第7位、神奈川県女性人気3位といったアワードを複数獲得するなどますますの支持を集めている。

 もっともこれほどの施設であってもコロナ禍の影響は免れなかったようで、20年夏以降の来客者数は前年比8割の水準にとどまったという。20時以降開いている店がなく行き場を失った若者客が、近年のサウナブームも相まって急増したことが下支えとなったとはいえ、特に土・日祝日のピーク帯の年配客およびファミリー層が大きく落ち込んだことが要因だ。
 売上げに関しては、遠距離からも集客する大型スパ系施設が昨年比50%を割り込んだともいわれるなか、同施設では20年春の緊急事態宣言解除後すぐに朝風呂の時間帯の売上げが100%近い数字にまで回復するなど、足元商圏の住民にとって不要不急ではない、生活習慣の一部として利用されていることが奏功し、極端な落ち込みは回避できている様子である。
「収益的に厳しい側面がない訳ではないが、だからこそ、いたずらに入浴料金を値上げしてお客さまの日常使いに負担をかけるようなことは考えていない」(同社常務取締役 久下沼伊織氏)。

 そこで目下注力するのが、来店頻度の向上と、休館日を活用した特別な体験の提供だという。前者に関しては、コロナ禍により男女比のバランスが従来の3対2から2対1にまで崩れたことが背景にある。どんなに感染症対策を徹底しても、また混雑状況をリアルタイムで発信しても、感染することを不安に思う層、すなわち主に女性(≒ファミリー層)はたとえ割引クーポン券を配ったところで来ないとの判断のもと、1か月当たり10回以上来店する300人超の男性常連客を中心に、週1回利用が週2回足を運ぶようになる来店動機を刺激するイベントを実施。全国のご当地ラーメンを週替わりで楽しめる「ラーメン駅伝」を食事処で展開したほか、自粛ムードが続くなかせめて旅行気分を味わってもらえればと、日替わり風呂に投入する入浴剤を日本の名湯・名城にちなんだものにし、あわせてガイドブックのように写真や解説を記したポップ類などを浴槽周辺に展示する企画なども開催した。
「入浴料は温浴施設売上げの肝。値下げせずにいかに来店頻度を高められるかのチャレンジでしたが、どのイベントもおおむね好評を博し売上げの落ち込みを緩やかにすることにつながったことは間違いない」(久下沼氏)。
テントサウナ体験
 後者の休館日特別営業は、同施設を日常使いする地元客ではなく、一般のお客を呼び込み、彼らから高い単価をとることを狙った施策となる。
 これまで浴槽の薬品洗浄や施設修繕を行ない、次の日に向けお湯を張っていた月に1度の休館日の施設を、作業を前倒しし、夕方から貸し切り小人数制(男女各50人程度)という非日常体験として商品化しオンラインで電子チケットを販売。入浴料が平日大人880円であるところ1,800円~2,000円の価格設定で売り出したが毎回売り切れる大きな反響を得て、売上げの立たない休館日にそれなりの粗利を生み出すことに成功している。
  
著名熱波師の技とパフォーマンスを間近で堪能
 なかでも3月16日に開催した「スペシャルアウフグース」「テントサウナ体験」は、全国から招いた著名熱波師の技とパフォーマンスを間近で堪能でき、話題のテントサウナを合法的かつ安心安全な環境下で楽しめる(露天風呂スペースに設置)とあってチケットは即完。
 日本最大のサウナ検索サイト「サウナイキタイ」ではイベント終了後も体験レポート・クチコミの投稿が相次ぐ盛り上がりを見せていた。
 なおこれらの取組みは、普段のお客に対するプレミアムな体験の提供や、イベントをきっかけに同施設を認知する新たな客層へのプロモーションとしても貢献したことは確かながら、スタッフ教育の観点からも有効だと久下沼氏は指摘する。お客が来ないからと手をこまねいているだけではじり貧に陥ることが明らかな状況下で、これまでとは違うアイデアを実現すべくトライしていく姿勢づくり、日頃のサービス提供への向き合い方が変わることを期待したものだという。
 新たに開始した、同施設オリジナルのサウナハットや折りたためるサウナマットの制作・オンラインショップでの販売もその取組みの一環。予想以上に売れ、利用者の同施設に対する愛着感の形成にも寄与できたで終わらせることなく、色違いをつくったらどれだけ売れそうか?お客の本当のニーズはなんなのか?などと考えさせることを通じ、スタッフの意識向上を図っている。
 「あれこれ挑戦した結果売上げがついてくる、やらなかった状態よりはマシな結果だよねというぐらいの感覚でどんどんスタッフに自信をつけさせているところです」(久下沼氏)。

飲食売上げの改善に向け、テナントと共同で再生プランを練る

 2か月間の休業期間を含む前期(9月決算)の年間来場者数は40万人。その前年の開業以来最多となる50万人という実績からちょうど2割減となったものの、足元の2月は昨年同月比9割にまで上向き、通常1,200円強の客単価も同様に9割程度にまで戻しているという。もっとも、コロナ禍が落ち着きを取り戻しても、自粛生活の反動のような外出・レジャーニーズは同施設商圏外に向かい、従来の行楽シーズン同様、入浴客が急増するようなことはないというのが久下沼氏の見解だ。今期の来場者数は43万〜44万人を見込み、引き続きスタッフとともに愚直に来店頻度を高める施策などに取り組んでいく方針である。
リモートワークの1人客を呼びこめる工夫を凝らす
 特に営業時間の3分の1が短縮された影響で売上げが前期の約6割にまで落ち込んだレストラン部門の再生には喫緊の課題と認識している模様である。客席の稼動率を高めるためにリモートワークの1人客を呼び込めるようブースを設置することを検討しはじめたほか、食事処(テナント)のスタッフの雇用を維持できるよう、レッドオーシャン化が著しい宅配フード市場でも勝てる仕組みづくり・メニュー開発などをテナントと一緒に推進していきたい構えである。
(業界動向/コロナ禍での経営体質改善策は本誌にて)
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