――㈱アカウント・プランニング 代表取締役/販促コンサルタント 岡本達彦
【新連載】いまからでも遅くない!
葬祭業界は、近年大きな変化の波に直面しています。超高齢社会の進展、家族形態の多様化、そして価値観の変化により、お客様ニーズも複雑化しています。そのため、効果的な販促活動の重要性はますます高まっています。しかし、多くの葬祭事業者にとって、販促活動の見直しは容易ではありません。長年続けてきた方法を変えることへの不安や、新しい手法の導入に対する戸惑いがあるかもしれません。また、葬儀という繊細な分野だけに、過度な販促活動は避けたいという思いもあるでしょう。
本連載は、葬祭業界の皆様に向けて、時代に即した効果的な販促方法を提案していきます。特に注目するのは、地域に根ざした葬祭業ならではの強みを活かしたチラシづくりです。チラシは、デジタル時代においても依然として有効な販促ツールです。特に、地域密着型のビジネスである葬祭業にとって、適切に設計されたチラシは、地域住民とのつながりを深め、信頼関係を構築する重要な媒体となります。この連載では、チラシの作成から配布まで、具体的かつ実践的なアドバイスを提供します。お客様のニーズを的確に把握するためのアンケート調査の方法、そのデータを効果的にチラシに反映させる技術、さらには使い勝手のよいA4サイズを最大限に活用するデザインのコツなど、幅広いトピックをカバーします。
葬祭業における販促活動は、単なる集客のためだけではありません。地域社会における皆様の役割や、提供されるサービスの価値を適切に伝えることで、お客様との信頼関係を築き、長期的な関係性を構築することが目的です。皆様の販促活動が、より効果的で、かつ葬祭業の尊厳を保ちつつ行なえるものになることを願っています。時代の変化に柔軟に対応しながらも、大切な伝統や価値観を守り続ける。そんなバランスの取れた販促活動の実現に向けて、ともに歩んでいきましょう。
葬祭業界における販促活動は、その特性上、細心の注意を払いながら行なう必要があります。しかし、時代の変化に合わせて効果的な販促ツールを活用することは、地域社会との良好な関係構築や、サービスの価値を適切に伝えるために不可欠です。ここでは、葬祭業に適した主な販促ツールの種類と特徴について説明していきましょう。
まず、印刷媒体について考えてみます。「チラシ」や「パンフレット」は、地域密着型の葬祭業にとって依然として重要なツールです。これらは、詳細な情報を視覚的に、かつわかりやすく伝えることができ、手元に残るという利点があります。特に、事前相談や生前契約などのサービスを紹介する際に効果的です。次に、デジタル媒体です。「Webサイト」は、24時間365日情報を発信しつづけることができる重要なプラットフォームです。葬儀の流れや料金体系、会社の理念などを詳しく説明することができ、若い世代へのアプローチにも有効です。また、「SNS」の活用も徐々に広がっています。FacebookやInstagramなどを通じて、追悼イベントの告知や、お花や供物の紹介など、葬儀に関連する幅広い情報を発信することが可能です。
地方新聞や地域情報誌など「地域メディア」への広告掲載は、地域に根ざした葬祭業にとって効果的な手段です。これらは、地域住民の信頼度が高く、確実に目にふれる機会をつくり出すことができます。直接的なコミュニケーションツールとして、「ダイレクトメール」も有効です。特に、既存顧客や過去に関わりのあった方々に対して、新しいサービスの案内や、感謝の気持ちを伝える手段として適しています。また、「地域イベント」や「セミナーの開催」も、重要な販促ツールの1つです。終活セミナーや供養イベントなどを通じて、地域の方と交流をもつことで、信頼関係を築くことができます。「クチコミ」も忘れてはならない販促ツールです。満足いただいたお客様からの紹介は、葬祭業界において特に大きな影響力をもちます。これは直接的な販促ツールではありませんが、他の販促活動を通じて築いた信頼関係が、結果として強力なクチコミにつながります。
これらの販促ツールは、それぞれに特徴があり、単独で使用するよりも、複数を組み合わせて相乗効果を生み出すことが重要です。次は、これらのツールのなかから、自社にとって最も効果的なものを選び出す方法について詳しく説明していきます。
効果的な販促ツールを選択する際には、単に流行や他社の動向に追随するだけでは不十分です。自社の特性や地域の実情、そして何よりもターゲットとなる顧客層のニーズを深く理解したうえで、慎重に選定する必要があります。以下に、効果的な販促ツールを選ぶための重要なポイントをいくつかあげていきます。
まず、自社の強みと弱みを正確に把握することが重要です。たとえば、長年の実績があり地域での知名度が高い葬儀社であれば、その信頼性を活かしたツールを選択するべきです。具体的には、地域情報誌への記事広告や、地元イベントでのセミナー開催などが効果的といえます。一方、新規参入や事業拡大を図る葬儀社であれば、より広範囲に認知度を高めるためのツール、たとえばSNSやWeb広告などを積極的に活用することが有効だといえます。次に、ターゲット顧客層の特性を十分に考慮することが大切です。高齢者が主なターゲットである場合、デジタル媒体よりも印刷媒体やダイレクトメールが効果的でしょう。一方、事前相談や生前契約などのサービスを若い世代にも広げたい場合は、WebサイトやSNSを活用し、終活の重要性や自社サービスの特徴をわかりやすく伝える工夫が必要です。
地域特性も重要な要素です。都市部と郊外では、効果的な販促ツールが異なる可能性があります。たとえば、人口密度の高い都市部では、駅や商業施設での「ポスター広告」が有効かもしれません。一方、郊外では、地域コミュニティとの連携を重視し、地域の回覧板やコミュニティ誌への掲載、地域イベントへの参加などが効果的でしょう。さらに、季節や時期による変化も考慮すべきです。たとえば、お盆や彼岸の時期には、供養に関する情報を中心としたチラシやWebコンテンツを用意するなど、時期に応じた販促ツールの使い分けが重要です。予算も販促ツールを選ぶうえで重要な要素です。限られた予算のなかで最大の効果を得るためには、費用対効果を慎重に検討する必要があります。たとえば、初期投資は大きくても長期的に見れば効果が持続するWebサイトの充実を図るか、あるいは即効性は高いがコストがかかる新聞広告を選択するか、自社の状況に応じて判断しましょう。
最後に、販促ツールの選択は、一度決めたら終わりではありません。定期的に効果を測定し、必要に応じて見直すことが重要です。たとえば、チラシ配布後の問合せ数の変化や、Webサイトへのアクセス数の推移といった数値をもとに効果を検証し、常に改善を図っていく姿勢が大切です。葬祭業における販促活動は、単なる宣伝ではなく、地域社会と信頼関係を築き、顧客に寄り添うサービスを提供するためのコミュニケーション手段です。この点を常に意識しながら、最適な販促ツールを選択し、効果的に活用していくことが持続可能な事業発展につながるのです。
「いまからでも遅くない!販促強化 見直し講座」は、月刊フューネラルビジネスで連載中です。
企業の隠れた魅力を引き出し、効果的に伝える販促専門コンサルタント。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見てきて培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティング理論・心理・テクニックを覚えなくても「アンケートやマンダラの答えから売れる広告を作る」という独自の広告作成手法を生み出す。お金をかけず簡単で即効性があることから、全国から講演依頼が殺到。お客様目線の組織にするため、社内に取り入れたいという企業からのコンサルティング依頼も後を絶たない。著書に、「アマゾン上陸15年『売れたビジネス書』50冊」にランクインし、販促書籍のヒット作となった『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法~チラシ・DM・ホームページがスゴ腕営業マンに変わる! 』をはじめ、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法~「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる! 』(いずれもダイヤモンド社)、『お客様目線のつくりかた~ 顧客視点は仕組みで生み出せる』(悟空出版)。最新刊に『不安がなくなるとモノが売れる』(総合法令出版)がある。