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――編集部

火葬場に集積する会館と
最強立地に建つ会館の現状

考察レポート│4つの事例から

詳しくは本誌「総論」で展開しているが、顧客誘導施設の1つである火葬場近接地に葬祭会館を立地させることは、サービスを享受する顧客、提供する葬儀社双方で非常にメリットが大きい。そうした典型的なケースとして、群馬県の公共火葬場である高崎市斎場と前橋市斎場の会館集積状況をみていく。
一方、立地戦略においてロードサイド・レールサイド・インターチェンジ近接地・火葬場近接地の立地環境4因子は、最も大事な要素である。すべての因子に恵まれた(狙った)葬祭会館は、東北地方に2会館存在する。山形県寒河市の「ファミリー斎場 寒河江」と、岩手県大槌町の「大槌家族葬ホール」の立地状況をレポートする。

群馬県の2大都市の公共火葬場
ともに7会館が周囲に集積

1.高崎市斎場の会館集積状況

 高崎市斎場は式場併設の火葬場で、JR・上信電鉄高崎駅から南に5km(車で約12分)、観音山丘陵の一角、高崎市寺尾町に立地する。供用開始は2016年。1978〜80年にかけて建設された旧火葬場の駐車場用地に建て替えたものだ(総事業費約40億円)。敷地面積4万0,111.43㎡、RC造地上2階建て、延床面積7,400.99㎡の規模を誇る。

 施設全体は火葬・式場・待合の3つのゾーン(棟)からなる。火葬炉は12基、6室ある告別収骨室は葬家の最後のお別れが個別にできるよう配置される。併設式場は約200人規模の大式場、約100人規模の中式場(大中式場は一体利用が可能)、約10人規模の小式場の3つ。これらの周囲には、遺族控室・導師控室を含む6つの控室が付帯する。待合ゾーンには12室の待合室と会葬者控室、キッズルームなどが整備されている。

図表1 高崎市斎場周辺の会館集積状況

 市斎場の周辺には、図表1のとおり、周囲700m〜2.1km、車で2〜5分の範囲に6社7会館が集積する。そのうち、会館Ⓑ、Ⓒ、Ⓓ、Ⓔの4つの会館が旧火葬場時代に開業したもので、最も早いのが1995年にオープンしたI社の会館Ⓑ。その後、会館Ⓑに隣接して99年に開業したのがJ社の会館Ⓓである。

 そうしたなか、今年6月に北東方向1.3km、車で3分のところにL社が会館Ⓕを出店。L社は後述する前橋市斎場の周辺に3会館を集積させており、今回、大手事業者が競っていた市斎場の周辺市場に割って入った形であり、今後、勢力図がどうなるのか注目される。

 Ⓐ〜Ⓓの4つの会館は、市斎場から1km以内の距離に、県道71号に沿ってきれいに建ち並ぶ。その会館銀座ともいうべき景観は壮観であろう。市斎場の稼動状況は火葬が4,168体、併設式場は410件使用された(ともに23年度)。火葬件数の1割程度しか併設式場が利用されていないことから、民間の葬儀社(葬祭会館)が頑張っている構図が見て取れよう。

2.前橋市斎場の会館集積状況

 前橋市天川大島町にある前橋市斎場は2011年、約35億円の事業費をかけて、1972年開設の旧火葬場を建て替えたものだ。JR両毛線前橋駅から東に3km弱、車で約9分、周辺は戸建て住宅が密集する住宅地であり、こうした環境下にある火葬場は全国的にも珍しい存在かもしれない。

 敷地面積1万0,149.95㎡、延床面積6,763.56㎡、鉄筋コンクリート造(一部鉄骨造)平屋建てで、低層住宅地という周辺環境に配慮した建築構造となっている。

 高崎市斎場同様、火葬・式場・待合ゾーンからなり、火葬炉は12基、6室ある告別室は1室で2炉に、3室ある収骨室は1室で告別室2室に対応し、よりプライベートな別れの場を提供する。併設式場は3式場あり、隣り合う150人規模の2式場(一体利用が可能)と170人規模の1式場(分割利用も可能)から構成。各式場には、椅子席(60〜72席)の式場控室と畳敷きの遺族控室を3室ずつ配置する。待合ゾーンには64席5室と48席6室の計11室の待合室を確保する。

図表2 前橋市斎場周辺の会館集積状況

 図表2は、前橋市斎場の周囲に集積する葬祭会館をまとめたものだ。同火葬場の西・東・北側に隣接する4会館(徒歩2〜3分)のほか、車で4分、900m〜1.4kmの範囲内に4社7会館が集積する。会館Ⓒ〜Ⓖの5会館は旧火葬場時代からのもの。第1号は1992年に南東1.3kmに会館Ⓕを確保したJ社。2005年には会館Ⓕに隣接して、別館のような形で会館Ⓖを建てている。

 とはいえ、認知性の面で他社を大きくリードしているのはL社だろう。2001年、03年、22年に3会館を市斎場そばに立地させたからだ。J社もグループのN社で会館Ⓐを22年にオープンさせて都合3会館とし、市斎場の周辺市場における2社の陣取り合戦が激しくなっている。

 以上2つのケースは、ともに併設式場を擁する火葬場であり、他方、併設式場のないケースもみておく必要はあるだろう。たとえば、静岡市の静岡斎場(炉数12基、01年供用開始)は、火葬場そばに4会館、1.1〜1.7km離れて2会館の計6会館が集積する。今後の課題としたい。


最強立地(ロードサイド・レールサイド・インターチェンジ近接地・火葬場近接地)に建つ山形県寒河市の「ファミリー斎場 寒河江」と、岩手県大槌町の「大槌家族葬ホール」の立地状況レポートは本誌でお読みいただけます。

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