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――【抜粋】葬祭会館の開発・整備状況

回復トレンドにある葬祭業界
全国の会館数1万0,764か所

2023年はコロナ禍の影響で最も落ち込んだ観光・旅行・飲食・サービス業をはじめ、わが国の経済・社会活動が正常化へと向かいつつある1年であった。では、葬祭業界はどうだったか。月刊フューネラルビジネス6月号「総論|回復トレンドにある葬祭業界全国の会館数1万0,764か所」では、2023年の国内外情勢、2023年の葬儀市場、葬祭会館の開発・整備状況の3項目をレポート。ここでは、葬祭会館の開発・整備状況の一部を抜粋して掲載する。

2023年の新設会館数334か所
1会館あたり死亡数は全都道府県で上昇

(1)新設会館の動向

 図表は、都道府県別にみた民営の葬祭会館の開発・整備状況を示したものである。棒グラフの上方の値が23年現在の都道府県別の会館総数を、下方の値は23年の新設会館数を表している。

 編集部が確認できた23年の新設会館は、全国で334か所だった(新装オープン等を除く)。1990年代後半~2000年代中頃を第1次開発ラッシュ期とすれば、近年続く年間300か所越えは、もはや第2期ラッシュ期に突入しているといっても過言ではない。こうした背景には、建物の老朽化や内外観デザインの陳腐化だけでなく、葬儀が縮小化するなかで進行する、葬祭会館の低層・コンパクト化が大きく影響していると考えられる。

 最も新設数が多かった都道府県は、埼玉県、愛知県、大阪府で、同数の26か所で並んだ。埼玉県は、大手互助会とグループ経営による全国展開を目論む専門葬儀社の2強が競って出店(前者10か所、後者8か所)したことが新設数を押し上げた。愛知県は互助会とともに、専門葬儀社やJA葬祭も頑張っている印象。大阪府は専門葬儀社の出店が目立っている。これらに次ぐ北海道22か所と静岡県20か所をはじめ、上位5道府県が20か所を超える大量出店。一方で、福井・山梨・鳥取・鹿児島県の4県は新規出店を確認できなかった。なお、23年の新設会館334か所は、本誌に「DATA|2023年全国新設会館一覧」として掲載している。
 
 
 

図表 都道府県別の会館数(2023年オープンまで)

(2)新旧合わせた会館総数

 前述したように、2023年1年間の新設会館は334か所であり、これを加えた全国の会館総数は1万0,764か所となった(24年4月現在)。1万か所といえば、わが国の中学校(国立・私立・公立)と同程度の配置数である。

 葬祭会館は1970年代前半に出現した。その後、80~90年代の大都市各地における発展期を経て、2000年代に全国規模で本格的な会館時代へと突入し、自宅葬から会館葬への移行が進んだ。(こうした会館の普及プロセスは、本誌「集計・分析|47都道府県における会館普及プロセスの考察」に詳しい)。地域によっては寺院葬も会館葬にとって代わられた。いまや都市部・農村部問わず、会館で葬儀をすることが当たり前となり、普遍的な存在となったのである。

 では、現在の都道府県別の会館数を図表で確認してみよう。最も多いのが、①愛知県684か所、次いで②大阪府572か所、③福岡県557か所と続き、この3府県が500か所を超えて飛びぬけて多い。以下、400か所台が5都県で④埼玉県436か所、⑤神奈川県433か所、⑥北海道427か所、⑦東京都414か所、⑧千葉県413か所と僅差で続く。いずれの都道府県も、特別区や政令指定都市といった大都市を抱えているために葬祭市場(死亡数)が大きいところばかりである。

(3)都道府県別の1会館当たり死亡数

 もはや店舗ビジネスといっても過言ではない葬祭業にとって、「密」の市場では出店数の多寡で雌雄が決するといえ、そのために競合会館が多くなるのは論をまたない。とはいえ、葬祭会館のより正確な充足・普及度の指標を知るには「1会館当たり死亡数」を用いて比較しなければならない。

 1会館当たり死亡数は、(年間)死亡数を会館数で割り算し、1つの会館で年間何件の葬儀を施行できるかという目安を算出するもの。それによると、2023年における1会館当たりの死亡数(全国市場)は147.8人(件)と導き出せる。
 都道府県別にみると、22年と比較して全都道府県で上昇している。23年の死亡数は22年より8,000人余り増加したが、この伸びが会館数が増加する以上に大きかったからと考える。死亡数は40年のピークに向かってふえていくと推計されており、今後も「会館がなければはじまらない」葬祭表のビジネスモデルが続く限り、1会館あたり死亡数はじりじり上昇していくことになろう。

 先の会館数上位8都道府県の1会館あたり死亡数を算出すると、愛知県119.1人、大阪府187.5人、福岡県112.4人、埼玉県192.9人、神奈川県229.2人、千葉県178.5人、北海道177.0人、東京都336.0人となる。早くから会館が普及した会館先進県である福岡県、愛知県を除けば、総じて全国市場より高いことがわかる。その理由として考えられるのは、大都市を抱えて会館需要が大きいにもかかわらず、そもそも新規開発地や転用地が少ない大都市部では、立地条件や周辺環境などの面で適合するスペースが容易には確保できないからである。

 1会館あたり死亡数は、数値が低いほど会館が普及・充足し、換言すれば、競合が激しく出店余地が小さいということになる。全国で最も数値が低い都道府県は、2005年時点ですでに100人前後まで低下していた①栃木県で、23年は86.8人であった。次いで、②福岡県92人、③宮崎県93.2人が続く。以下、④香川県94.4人、⑤岩手県94.7人、⑥佐賀県94.4人と、東北や九州地方などの上位6県が100人を切っている。これらの県では、あくまで計算上だが、1つの会館で年間に獲得できる件数が100件に満たないという見当が立つ。


本誌では、より詳細なレポートや、全都道府県の1会館あたり死亡数、市区町村別の1会館あたり死亡数などを掲載しています。

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