2003年6月に地方自治法が改正され、自治体が所管する公の施設の管理について指定管理者制度が導入された。
火葬場においては04年から導入されており、仙台市の「仙台市葛岡斎場」、川崎市の「かわさき北部斎苑」「かわさき南部斎苑」、兵庫県の「芦屋市聖苑」「南あわじ市沼島火葬場」「西脇多可広域斎場やすらぎ苑」の6火葬場で導入された。
翌05年にも6火葬場に指定管理者制度が導入され、最も多かった06年には74火葬場となった。そしてこの年から14年まで毎年2桁の火葬場で導入されたが、15年に1桁になり、16年に再び2桁の火葬場での導入を経て、以後は1桁の導入にとどまっている。
指定管理者制度を導入している火葬場は313施設ある。都道府県別に導入状況(図表1)をみると、広島県の23火葬場が最も多く、次いで新潟県の22火葬場、北海道の20火葬場と続く。必ずしも政令指定都市を抱えるところが多いわけではなく、島根県12火葬場、茨城県11火葬場、鹿児島県10火葬場、青森・岩手・長野県9火葬場と地方都市において指定管理者に委ねている傾向が高いことがわかる。つまり、地方都市において人手不足が露呈していることも要因の1つとして推察できる。事例で紹介している信州さがみ典礼は、長野県上田市の大星斎場・依田窪斎場の2火葬場を運営しているが、もともと上田市・東御市・長和町・坂城町・青木村による上田地域広域連合が運営していたものの、「深刻化する職員数の不足」などにより指定管理者制度を導入したという。
受託企業としては、①火葬炉のメンテナンスに長ける火葬炉メーカー、②その他設備のメンテナンスや清掃業務に長けるビルメンテナンス企業、③全国各地でさまざまな施設の運営を手がけている企業、そして④葬祭事業者の4つに大別することができる。それぞれ単独で受託しているケースと、①〜④のうち2つ以上の複数企業によるコンソーシアムが受託しているケースがあるが、際立った傾向はみられない。
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指定管理者としての葬祭事業者は、葬儀という人生最後の儀式をとり行なう企業で、遺族・会葬者に寄り添った運営を行なっている。このことは、火葬場においても、悲しみに暮れる遺族・会葬者への接客・接遇に長けているといえ、単なるサービス業とは異なり、指定管理者としては適任といえる。
また、式場を付帯(併設)している火葬場もあるが、その場合はより指定管理者としてふさわしいだろう。当然、競合葬儀社の利用もあるが、受付をはじめとする応対だけをみても適任である。
では、式場を付帯している火葬場ではどの程度指定管理者に委ねているのだろうか。図表2は都道府県別に式場付帯火葬場における指定管理制度の導入状況をまとめたものである。
指定管理者制度を導入している46都道府県中、式場が付帯する火葬場を有するのは26府県に及ぶ。なかでも群馬県、香川県、高知県では指定管理者制度を導入している火葬場すべてに式場が付帯している。
このほか、埼玉県が12火葬場中9施設、茨城県が11火葬場中7施設、千葉県が9火葬場中5施設、大阪府が17火葬場中8施設、神奈川県が6火葬場中3施設、熊本県が4火葬場中1施設に式場が付帯。また、最も多くの火葬場で指定管理者制度を導入する広島県(23火葬場)も8施設に式場が付帯している。(図表3)
さて、事例で取り上げた各社はどのような経緯で指定管理者に応募したのだろうか。前述のように信州さがみ典礼は、行政の「深刻化する職員数の不足」としている。清月記については、東日本大震災を経験し、当初自衛隊が行なっていた石巻市での仮埋葬を引き継いだことを幾に、民間事業者であれば有事の際に24時間体制を組むことができることから、応募したという。
一善は指定管理者になったことで、地域住民との距離感が近くなったといい、法美社や協同サービスも地域貢献としての意義を見出している。
各社に共通するのは、葬祭事業者として人の死に携わり、遺族に寄り添うことができるという、何事にも代えがたいノウハウを活かすことができるという点だ。火葬場の指定管理は、体育館や運動場などの公の施設とは異なり、機械的な業務でいいはずがないことをわかっているから務まるのだろう。