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―― 一般社団法人日本遺体衛生保全協会[ 東京都千代田区]代表理事

[インタビュー]渡邊正典氏

2020年度のエンバーミング処置件数は7万件を超えた。今後はさらなる普及に向け、空白地を埋めること、一般の方々への認知度アップが重要となる。一方で、法制化に向けた活動を活発化するなか、23年には「エンバーミングのあり方を考える議員連盟」が設立された。
そこで、日本遺体衛生保全協会(IFSA)の代表理事に就いた渡邊正典氏に、エンバーミングの現状と展望を伺った。

空白地を埋め門戸を開くことが
普及の早道

――コロナ禍によって葬儀が変わってしまいました。そのなかで、エンバーミングは今後どのような位置づけになるのでしょうか。

渡邊 コロナ禍の3年間で、葬儀を行なわない直葬がふえました。そして死亡者数がふえたことで火葬待ちの問題も表面化しました。大都市においては4日待ち、5日待ちが当たり前になってきたなかで、エンバーミングを採り入れることで、葬儀の小規模化、簡素化という流れを大きく変えることができると思っています。

エンバーミングをすることによって、時間をかけてお別れをすることができ、これは大きな強みになると思っております。

 

――エンバーミングが葬儀を変えることになる一方で、多くの葬祭事業者はエンバーミングセンターをもっていません。

渡邊 エンバーミングのよさ、強みについてはIFSA加盟企業には浸透しております。今後はエンバーミングセンターをもっていない葬祭事業者にもIFSAに加盟してもらえるよう訴求したいと思っております。エンバーミングの門戸を開いていくのが、普及のためには一番大切なことだと思います。

 

――2022年はエンバーミング処置件数が急激にふえました。

渡邊 エンバーミングセンターがふえたことが大きな要因といえるでしょう。21年が70センター・24業者だったのが、22年は85センター・28業者までふえました(図表1)。これはエンバーミングの必要性が浸透してきた結果だと思います。

 

 

――85のエンバーミングセンターが整備されているなかで、空白地もあります。

渡邊 現在、空白地の群馬県、長野県などはやっていただけるという話がありますが、問題は四国4県には1つもセンターがないので、ここをどうするかを考えているところです。具体的には今年四国でセミナーを開催しました。こうした活動により、エンバーミングの認知度を高め、そして必要性を説いていきます。また、たとえばIFSAとしてエンバーミングセンターを開設することも検討すべきでしょう。これは四国に限らず、開設していない空白地や、すでにセンターがあるものの、不足しているところなどにIFSAが開設することで、どの葬祭事業者からの依頼も受け入れることができます。もちろん、そのためにはIFSAに加盟していただくことが条件となりますが、1事業者では葬儀の件数的にむずかしかったのが、オープンなエンバーミングセンターができることによって、普及の足がかりになるでしょう。

         

                                       ——中略——

 

消費者への認知度アップとともに
法制化にも着手

――一般の方々の認知度はいかがですか。

渡邊 現在、エンディングノートにエンバーミングの項目は入っていません。そこにエンバーミングが入ってくるようにならなければいけないと考えています。そうすることで、政府や国会議員の先生方にアピールでき、法制化に向けた足がかりになると考えています。
エンバーミングは現在、法制度ができていないため、IFSAに入っていなくてもエンバーミングをやろうと思えばできる状態です。法に基づいた規制のない現状では、エンバーミングの定義は業者によってまちまちになってしまうことにもなりかねません。そこでIFSAでは、その対策として自主基準を設けています。IFSAの会員あるいはIFSAに入っている事業者は、それに準じたエンバーミング処置を行なっております。

アメリカやカナダでは、州法でエンバーミングについて定められていますが、日本としても同じように法規制をしていきたいと考えています。コロナ禍が明けたことで外国からのインバウンドがコロナ前に戻りはじめていますが、今後は海外の方の死が必ずクローズアップされてくると思います。
アメリカ人や中国人、キリスト教の方もいれば、イスラム教の方もいる。そのなかで、エンバーミングをすることが当たり前の国もあります。そうすると海外に搬送するために、きちんとしたエンバーミング処置が必要となってきます。
こうした国内でのエンバーミングの規制に加え、海外の方が日本で亡くなられた際の規制の2点を踏まえたうえで自主基準を設けながら、最終的には「法律」をしっかりとつくっていきたいというのが、現在のIFSAの方針です。

 

――その法制化に向けての現在の活動は、どういった段階ですか。

渡邊 今年6月に「エンバーミングのあり方を考える議員連盟」が設立されました。会長の自由民主党衆議院議員下村博文先生をはじめとする自民党の先生方数名と打合せをしており、勉強会を開くなどしています。今後も議員の先生方に議員連盟への参加を呼び掛けていただき、将来的には自民党だけではなく、与野党含めて連携をとっていきたいと考えています。
そのためにも、IFSAとしては空白地を埋める必要があります。また、センターを開設するだけではなく、エンバーマーの育成にも注力していかなければなりません。

 

――法制化に向けた第一歩ですね。

渡邊 IFSAとしては今後も国会議員の先生方や厚生労働省、日本医師会にもお願いして、法制化を目指していきたいと考えています。
また、厚労省から補助金をいただいているほか、21年から組み込まれた予備自衛官の件も、さらに具体化できると考えています。

(続きは本誌で・・・)

 

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