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――Editor's Eye

「相続土地国庫帰属制度」
4月27日より開始

 葬儀後のアフターサービスの一環として、相続に関する相談を受ける事業者も多いことだろう。そうしたなか、今年4月27日、「相続土地国庫帰属制度」が施行された。

相続土地国庫帰属制度とは?

 2021年4月、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(相続土地国庫帰属法)が成立し、同年12月14日に行なわれた閣議で23年4月27日から同法の施行が決定された。これが本稿で取り上げる「相続土地国庫帰属制度」である。
 簡単にいえば、相続が不要な土地を有する希望者が承認申請を行ない、法務局による審査を通過すれば、相続した土地の所有権と管理責任を国に引き取ってもらえるというもの。申請対象者は、亡くなった人の土地を相続して「土地全体を所有する権利」もしくは「土地の共有持分」を取得した人を指す。つまり、亡くなった人の配偶者や子といった法定相続人以外にも、遺言書によって財産を譲り受ける「遺贈」で土地を取得した人も含まれる。

 一方で、土地を売買するなど相続・遺贈以外の方法で入手した場合は対象外となり申請はできない。ただし、土地を複数人が共同で所有している場合、その共有者のなかに相続や遺贈で共有持分を取得した人が含まれていれば、すべての共有者が共同して申請することで相続土地国庫帰属制度を利用できる。
 本制度創設の背景には、先代、先々代からと相続が重なることによって権利関係が複雑化し、所有者がわからなくなった所有者不明の土地がふえ、結果、管理もされず放置されていくことを防ぐ目的がある。
 地方から都市部へと生活拠点を移す人がふえ、代々受け継がれてきた土地の所有意識が薄れてきたこと、少子高齢化の進行に伴い土地利用ニーズが少なくなったことなどがその要因だが、国としては、所有権が明確なうちに国の管理下に置くことによって土地の再利用を促し、新たな所有者のもとで活用できるようにすることを目指している。

図表 相続土地国庫帰属法の概要

申請・活用のメリット

  相続土地国庫帰属制度を活用するメリットとして謳われているのは、①買い手がつかない土地でも有効、②管理や手間を削減できる、③農地や山林も申請対象になる、の3点である。
 買い手がつかない土地でも有効とは、どんなに利便性の低い土地でも、要件を満たしていれば国が確実に引き取ってくれるというもので、たとえば、莫大な維持・管理費がかかる広大な土地所有者にとっては大きなメリットになる。管理や手間を削減できるとは、引き取った土地の管理は国が行なうため、土地が悪用されることもなくなる。
 3つ目の農地や山林も申請対象になるというのは、農業を営む人にとっては大きなメリットとなる。農地の場合、その売却にあたっては、買い手は原則として農家でなければならず、農地を宅地などに転用した後であっても、土地の売買には農業委員会の許可が必要といった農地法による条件が課されているからだ。また、山林の多くは、交通不便な場所にあるほか、樹木の管理も個人で行なう必要がある。災害リスクも高く、購入希望者も少ないため簡単に売買ができない土地であることを鑑みれば、農地・山林地を相続する人にとっては大きなメリットとなる。

 

(申請・活用のデメリット等は本誌で)

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