――第1回 そもそも海洋散骨って何?
和田睦美 一般社団法人全国海洋散骨船協会 事務局長/海洋散骨ディレクター講師
皆様、はじめまして。
今号から隔月で6回にわたり、「海洋散骨」について連載させていただくことになりました一般社団法人全国海洋散骨船協会の事務局を務める和田睦美と申します。
本連載では、海洋散骨に関する法律や問題点、また、安全にお客様を海洋散骨にご案内するための注意点などをご紹介させていただきます。
私は、冠婚葬祭会社に勤務する傍ら全国海洋散骨船協会の事務局長職を兼務し、当協会が認定する「海洋散骨ディレクター」講習の講師も務めております。本文中には、海洋散骨ディレクター講習で使用しているテキストの内容も含め、ご紹介させていただきますので、少しでも皆様の参考になることがあれば幸いです。
全国海洋散骨船協会は、主に散骨事業を行なっている旅客船運航会社が中心となって2016年6月に設立されました。
当時、海洋散骨が注目されはじめ、これまで海と無関係だった方々が海上で仕事をするようになりました。
海のマナーやルールを知らない人々による危険な行為や周囲の方々の迷惑となる行動を目にするようになり、旅客船を運航している事業各社は、将来大きなトラブルが発生することが懸念されるため、「安全で快適な、周囲に迷惑をかけない散骨船の育成」を目的に協会活動をはじめました。
もともとは旅客船の運航会社が中心となって創設された協会ですが、もちろん旅客船運航会社以外でも入会可能ですし、定期的に開催する研究会は、散骨に関する最新の事情や、船舶運航に関する最新情報の交換の場となっております。皆様には、海洋散骨ディレクター講習の受講とともに、協会への入会もお勧めしております。
近年、海洋散骨という言葉がたびたびマスコミに取り上げられるようになりました。なかでも、昨年4月17日、故石原慎太郎元東京都知事の散骨式が葉山沖で行なわれたという報道はご記憶の方もおられるでしょう。
この報道を受け、私は海洋散骨がごく当たり前の葬送として扱われ、海洋散骨が市民権を得つつあることを実感したものです。
さて、ここで「散骨」の歴史を振り返ってみましょう。
「散骨」は、実は万葉集にも謳われるほど、古来より行なわれていたようです。しかし、本連載では、近年行なわれている海洋散骨について焦点を絞ってお話を進めたいと思います。
まず、海洋散骨が増加した「時代的背景」についてのお話です。わが国では、人が亡くなると火葬にし、焼骨をお墓に安置することが一般的でした。しかし、核家族化が進み、新たに独立した家庭では家墓をもっていないことも多くなっています。そのほか、単身世帯の増加や儀式離れなどの社会的な変化もあり、お墓以外の選択肢が求められていたのかもしれません。
そもそも、お墓は継承者を必要とするため、継承者のいないご家族や単身世帯などにとって、散骨は重要な選択肢となっています。
(散骨に関する事業者の動きと、現在の法制度は本誌で)
所在地 東京都渋谷区東3-25-10 T&Tビル
設立 2016年6月
理事長 志賀 司
加盟社数 12社(2023年3月現在)