エリアレポート「REIWA」vol.15 福島県郡山市
45会館が林立する激戦区。首位の互助会が５割に迫る
明治時代に疏水（水路）が整備されたのを機に、近代以降、急激な発展を遂げた福島県郡山市。現在は新幹線や高速道路が走る交通の要衝にして、宮城県仙台市に次ぐ東北地方２番目の経済都市となる。
一方で、多くの地方都市と同様に少子高齢化が進行。甚大な被害をもたらした東日本大震災の影響もあり、経済都市としての将来に不安を残している。
今回のエリアレポートは、そんな郡山市を取り上げた。年間死亡数3,500人超のマーケットに、45もの葬祭会館が林立するなか、大手互助会がシェア５割に迫る勢いでトップを独走。それを追うJAと互助会の２社を合わせたシェアは７割を超え、残りを専門葬儀社が競合する構図だ。
東北新幹線が乗り入れるJR郡山駅の駅前
「市場状況」
駅西側の市街地エリアが集積地に
郡山市内に本社・営業所や葬祭部などを構える葬祭事業者は、17社ほどとみられている。うち、自社会館を有するのは14社１組合、計45会館が市内に分布する。これらの会館の大半は、JR郡山駅を中心とした半径５km圏内に集中しており、特に郡山駅から南北に伸びる東北新幹線と、その西側を走る東北自動車道に挟まれた市街地エリアに７割近くが集積している。
現在、郡山市内で最多の15会館を展開するのが冠婚葬祭互助会のアルファクラブとアルファクラブ東北だ。両社は全国展開するアルファクラブグループ傘下の企業で、市内では共同で葬祭事業を展開しており、シェアは50％に迫る勢いだ。駅の東口と西口に、いずれも400〜500人規模の大規模会館「郡山斎場」と「開成斎場」を配置して旗艦会館としつつ、その周囲に中規模、小規模会館を出店することで、大規模葬から小規模葬まで幅広い葬儀を取り込み、シェアを伸ばしてきた。近年増加する家族葬需要に対応するため、20年には家族葬専門の別ブランド「家族葬のファミラル」を立ち上げ、郡山市内にも１か所オープンしている。
アルファクラブに次ぐ市内２位のシェアを維持するのがJA福島さくら協同サービス、続くシェア３位がグループ内に冠婚葬祭互助会（ハートライン）と老舗専門葬儀社（たまのや）を傘下にもつこころ
市内には45か所の葬祭会館が分布する。46は寺院系、48～52は総合病院。火葬場は47の市営「郡山市東山悠苑」の１か所のみで、併設式場はない。
ネットグループで、この２社を合わせて30％程度のシェアとなっている。
シェア１位のアルファクラブと３位のこころネットグループは郡山市以外の東北、北関東地域でも商圏が重なるケースが多く、エリアによってはこころネットグループがシェア１位になるなど、広域にわたって競合関係にある。
「葬儀傾向」
コロナ禍で小規模・簡素化が進む
ある葬祭事業者によれば、いまから20年ほど前まで、郡山市は骨葬が主流だったという。この地に骨葬が根づいた背景には、地元葬儀社による強いはたらきかけがあったようだ。
しかし、広くて充実した設備をもつ市営火葬場「郡山市東山悠苑」が1991年に完成し、また2000年以降に互助会を中心にエンバーミングが普及したことで、「大勢の会葬者が、きれいなままのご遺体を火葬場でお見送りする」というスタイルが広がり、後火葬の習慣が復活。さらに近年は葬儀の小規模化が進行したため、いまや骨葬の習慣はほとんどみられなくなっている。
葬儀の小規模化、低価格化は、市内では10年ほど前からゆるやかに顕在化していったようだ。複数の葬祭事業者の話を総合すると、10年前の市内の平均葬儀単価は160万〜180万円、平均会葬者は130〜150人程度あった。その後、家族葬という言葉が市内でも認知されはじめ、インターネットを通じてさまざまな情報の取得が可能になったことで、徐々に小規模化と低価格化が進行。19年頃には平均単価150万円、平均会葬者も100人程度になった。さらに、20年以降はコロナ禍の影響を受け、平均単価は130万円以下、平均会葬者は50〜60人にまで急激に落ち込んでいる。
また、以前はほとんどなかった一日葬や直葬がコロナ禍を機に急増し、事業者によっては施行全体の２割弱が直葬、一日葬も１割弱程度を占めるまでに至っている。
コロナ禍以前の葬儀規模のような会葬者数の回復を狙うのか、あるいは小規模葬を受け入れつつ単価アップの戦略を探っていくのか。各事業者の今後の動向が注目される。
（地域概況や展開企業などは本誌で）
