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地方葬儀社の現在――慧眼的戦略の重要性

2年半に及ぶコロナ禍は、全国的に葬儀の小規模化に拍車をかけることになった。加えて一日葬や時差会葬、さらにはリモート葬儀など、これまでの葬送スタイルを大きく様変わりさせた。

コロナ禍による小規模化の影響は、すでに小規模葬が主流になっている都市部に比べて地方都市のほうが大きかったといえる。

そこで本特集では、地方都市で事業展開する葬祭事業者に着目した。コロナ禍の影響はどうだったのか、そしてその対応策をどう講じてきたのか……。

実は各社ともコロナ禍前から小規模化を想定した取組みに着手、あるいは準備をしていた。つまり、将来を見抜く深い洞察力による奮励が、このコロナ禍で結実したといえる。

慧眼的戦略に取り組んできた地方葬祭事業者4社にスポットを当てた。

業界取り巻く事業環境見据え
計画的な先行投資なくして飛躍なし

コロナ禍の影響が懸念された地方葬儀社

2020年から続くコロナ禍の影響は、08年に起きたリーマンショックをも上回る経済的打撃を与えた。葬祭業界においてもその影響は明らかで、本誌22年5月号(no.306)の特集で編集部が試算したところ、00年と21年では売上高がほぼ倍増、取扱件数も2.5倍まで増加しているにもかかわらず、1件当たりの施行単価は00年の約144万9,000円から21年の113万円弱と、2割ほど低下している。

 

その背景には、コロナ蔓延により発出された「緊急事態宣言」などの影響で、葬儀規模の縮小にさらに拍車がかかったことがあげられる。なかでも、その影響は「コロナ禍以前、200~300人を超える会葬者が集まった地方都市と、もともと20~30人規模だった都市部の葬祭事業者では、会葬規模が半減、もしくは4分の1になるインパクトを多大に受けるのは地方葬儀社。都市部の事業者は1ケタの会葬者であってもそのノウハウが蓄積されている」と、地方都市の葬祭事業者のほうが大きいとする声がある。

 

さらにいえば、「地方都市の消費者が、この2年半に及ぶコロナ禍で、小規模な葬儀でもいいのではと感じる人がふえたのでは」と指摘する声があるように、たとえコロナ禍が収束を迎えたとしても、従前の会葬規模にまで回復することはむずかしいとする意見が多勢を占める。

 

実際に、葬祭事業者はこのコロナ禍にどのように対応をしてきたのだろうか。

 

本誌20年6月号(no.283)を見返すと、3密防止を筆頭とする感染予防対策はもちろん、自社に備蓄されていたマスクを地域住民に無償配付するなど、でき得る限りの範囲で、地域貢献に奔走した葬祭事業者が多かったように思われる。

 

その後、オンライン葬儀などに代表されるITインフラを活用した新しい葬送スタイルや、SNS等を活用した事前相談、遺族らとのコミュニケーションなどは、まさにコロナ禍が生んだビジネスモデルといえるだろう。

 

もちろん、新たなビジネスモデルが完全に定着したとは言い切れないが、将来的な喪主世代のライフスタイルを鑑みれば、これらITツールを活用したDX化の波は避けて通れない時代が訪れるかもしれないという前兆として捉えておくことも肝要である。

有事の際の中長期事業計画の必要性

今号では、コロナ禍の影響が多大なものになると予測される地方都市で事業展開する4社を訪ねた。

 

4社に共通するのは、“コロナ禍以前から、将来的に進行する小規模葬送ニーズに対応する体制づくり”に注力していたことがあげられる。

 

したがって、コロナ禍だからといって特別な対応策(感染予防対策を除く)を講じたわけではなく、コロナ禍以前から、自社施行の会葬規模の経年動向から将来予測を行ない、小規模葬に対応する会館展開へとシフトするなどの計画を遂行していただけにすぎない。

 

そのうえで、(コロナ禍による)売上減を最小限にとどめ、かつ、施行単価の維持・向上に向けた提供プランの見直しに努めた。

 

また、新設する小規模会館も従来の葬祭会館のイメージとは一線を画したラグジュアリー感ある設えにすることで、納得感のあるリーズナブルな価格設定を実現。施行単価アップにつながるプランニングとなっている。

 

さらにいえば、ライフエンディングに関わるアフター部門の強化といった周辺産業への目配せも怠らずに行なっていたことが、結果として多くの消費者から支持されることになったといえる。

 

つまり、コロナ禍を乗り越えた事業者は、“その場限りの対応策に投資”するのではなく、“将来的な予測に基づいた投資”を計画的に、そしてコロナ前から推進しつづけたことが奏功し、結果としてコロナ禍による売上減を最小限に食い止めていたというのが真実のようだ。

 

 

2040年まで続く死亡数の右肩上がりを背景に、異業種からの業界参入もふえてきた。さらに、近年はWeb仲介業の台頭もあり、「家族葬」「一日葬」なる葬送スタイルが定着。葬儀そのもののあり方が大きく変わろうとしている。地方葬儀社の多くも、そうした動向を睨みながら葬送の変化を見越した中長期事業計画を立案していたに違いない。

 

先駆的事業者のなかには、編集部独自分析による本誌連載「全国市町村別の会館充足度指標」を独自に細分化。自社が展開するエリアの充足度から類推し、将来的には越境して出店エリアの選定を行なっている事業者もある。

 

大切なのは、何らかの有事が起きてからの対応ではなく、それら有事によって、想定よりも早く予測していた業界の将来像が訪れただけと、ブレることなく経営に専念できる中長期事業計画を、常にアップデートしていくことにほかならないのではないだろうか。

 

(ケーススタディは本誌で)

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