新たな官民連携手法である「成果連動型民間委託契約方式(PFS)」は、仕様発注・固定報酬による従来型の業務委託とは異なり、業務を実施して得られた成果を評価し、その達成状況に応じて委託費の支払額が変動します。そのため、成果の達成手段(事業手法、提供サービス等)は民間事業者の創意工夫に委ねられ、事業実施の自由度や裁量範囲が広いのも特徴です。
“社会課題の解決”を経済成長の一環と位置づける政府は、PFS/SIB推進に力を入れており、PFS事業の実施件数は2022年度末時点で179件を数えます。さらに2025年度までに90件の事業開始を目標に掲げ、さまざまなフォローアップが行なわれています。民間事業者においても、社会課題の解決を目指す公共サービスへの参入機運が高まっています。
PFSの事業機会獲得にあたっては、行政が抱える課題を正しく理解し、提案するサービスの具体的な有効性や定量的な実績、事業の実施体制を提示することが求められます。
本書は、PFS/SIBの制度の趣旨や事業スキームはもとより、参画における留意点・メリット、収益性評価、案件営業などについてわかりやすく解説いたします。
特に、官民対話からの案件形成、企画提案の視点、官民のリスク分担、契約協議の可能性、成果指標や支払条件で確認すべき項目、審査基準など、PFS特有のポイントについても先行事例を交えて詳解しています。
成果連動型民間委託契約方式(PFS)
○国または地方公共団体が民間事業者に委託等して実施する事業であり、
○解決を目指す行政課題、事業目標に対応した成果指標が設定され、
○民間事業者に支払う額等が当該成果指標の改善状況に連動する事業方式
です。「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」はPFSの仕組みにおいて、事業に係る資金を金融機関から調達し、行政からの委託費の支払額により返済するもの。
第1編~第3編 ㈱日本経済研究所 公共デザイン本部 地域マネジメント部
1. 制度創設の背景~PPPを取り巻く環境~
(1)社会的背景
(2)PPP/PFIの動向
①多様な事業類型の展開
②最近のPPP/PFIの動向
③PPP/PFIアクションプランの柱
(3)EBPM推進の流れ
2. PFS/SIBの特徴
(1)制度の意義・目的
(2)従来型の業務委託との相違
①発注方法・支払方法
②KPIの考え方
③事業期間
(3)事業スキーム
①ロジックモデルが成否のカギ
②リスクを民間が負担することで事業改善につながる
(4)支払いメカニズム
(5)実施体制
(6)PFS/SIBに期待される効果
3. 近年の動向
(1)実施状況
①件数
②分野
③特徴
(2)国内外の動向
(3)行政の検討状況と対象分野の広がり
(4)現状の課題
(5)今後の展望
1. 実施プロセス
(1)PFSガイドラインの趣旨
(2)実施ステップ
2. 事業の発案
(1)対象とする行政課題の選定
①課題の選定
②具体課題へのアプローチ
(2)事業目標等の選定
①対象者層
②改善目標
3. 案件形成
(1)成果指標の選定
①ロジックモデルの作成・検討
②成果指標の選定
(2)成果指標の上限値等の設定
(3)契約期間の設定
(4)PFS事業効果の算出、評価
(5)支払上限額の決定
(6)支払条件の設定
①固定支払額の設定有無及びその金額・割合
②支払時期及び支払額
(7)成果評価の方法
(8)実施体制に関する検討
①庁内関係者
②中間支援組織
③第三者評価機関
④資金提供者
4. 民間事業者の選定・契約
(1)民間事業者の選定方法
①公募型プロポーザル方式
②非公募
(2)成果水準書(仕様書)(案)等の作成
(3)選定基準等
①選定基準
②公告から提案書類提出までの期間
(4)PFS契約の締結
5. 事業実施
6. 評価、支払い
1. 事業参画に向けた基本的な考え方
(1)民間事業者にとっての参画意義
①社会的評価の獲得
②事業機会の拡大
③自由度の高い事業
④複数年度契約
⑤成果に見合った支払額の獲得
(2)行政から期待される役割
①行政事業の効率化・高品質化
②財政効果の創出
③新規事業や試行的取組みの推進
④産業・民間事業者の育成
⑤成果志向の普及
2. 事業参画への判断
(1)事業リスクの分析
(2)成果目標・成果指標の実現可能性
①成果目標・成果指標で確認すべき点
②成果指標の測定方法で留意すべき点
(3)支払上限額・支払条件の妥当性
①支払上限額の確認
②支払条件の確認(支払方法/支払いのタイミング)
(4)資金調達の必要性
①受託者と資金提供者のリスク分担
②SIB事業のスキーム
(5)コンソーシアム組成
①コンソーシアムの組成に向けた準備
②コンソーシアムの形態の検討
(6)契約協議の可能性と諸条件
①特に確認すべきポイント
②契約内容についての交渉・調整のタイミング
3. 事業機会の発掘と企画提案・協議
(1)事業発案段階
①「PFS官民ニーズ・シーズリスト」の活用
②国の補助事業への申請団体の確認
③官民連携窓口へのアプローチ
④民間提案制度の活用
(2)事業化検討(案件形成)段階
(3)公募段階
①予算編成
②公募資料
(4)公募・事業者選定段階
4. 官民対話の活用
(1)目的とタイミング
①行政側の目的
②開催のタイミング
③開催頻度・回数
(2)官民対話の種類
①主な種類と特徴
②官民対話への参加
(3)マーケットサウンディング
①実施手順・対話内容
②対話のポイント
5. 企画提案の視点
(1)参加表明書
①参加資格要件の確認
②会社概要・経営状況
③業務の実績
④業務執行体制(コンソーシアムの検討と各社の役割分担/社内体制)
⑤個人情報の取扱い
(2)企画提案書
①事業目的・目標(地域課題)の理解
②具体的なソリューションの提示
③提案根拠・実績の明示
④具体的な手順・スケジュールの提示
⑤遂行能力・体制の提示
(3)参考見積書
(4)審査の視点・基準
6. 事業開始後の留意点
(1)行政との連携・協力体制の構築
(2)セルフモニタリングによるPDCA
(3)コンソーシアム内や社内の連携と理解促進
7. 事業終了後の評価(事業概要/成果指標と成果/支払額/効果・成果/課題)
(1)医療・健康
(2)介護
(3)その他
8. 今後の展開
(1)事業実績の活用
①実績の可視化
②提案のパッケージ化
(2)真の官民パートナーシップに向けて
事業実施の経緯/事業参画の狙い/事業の体制/事業概要/成果指標、支払条件/事業の成果/今後の展開
1. 介護予防「あ・し・た」プロジェクト 大阪府堺市/阪急阪神ホールディングス㈱
2. SIBによる前橋市アーバンデザイン推進業務 群馬県前橋市/(一社)前橋デザインコミッション
3. 健康寿命延伸のための成果報酬型健康増進プログラム RIZAP㈱
綜合ユニコム株式会社 企画情報部
TEL.03-3563-0120