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投資家・AMから選ばれる物流施設におけるPMスキルの全容

執筆|古川武史 ㈱JPM 代表取締役社長

受託物件(常温倉庫・冷凍冷蔵倉庫)の整理

 現状、物流不動産をPM会社が管理するにあたって、その業務量と報酬はバランスの取れている状況だとは言い難い。これは、必ずしも業務内容に比して報酬が低いということだけを指しているのではなく、PM会社が担う業務に報酬をつけるという習慣がないということを指している。多くの場合、PM報酬は月額や年額といった設定された期間に対して、一律で支払われることが多い。しかし、契約書には内容が明確ではない「付帯業務の遂行」に関する一文があるために、実質的に想定外の緊急対応や軽微で細かな業務などが付加されることが少なくない。逆に、BM契約の付帯事項といった扱いでPM業務を捉え、実質的にはBM業務を行うだけで、PMフィーを得ている例も存在する。

 こういった状況は、ひとえにPM業務が正しく認識されていないことに起因しており、決して好ましいこととはいえない。なぜならば、物流不動産の価値を維持する、あるいは価値を向上させることは、本来あるべきPM業務を遂行することで達成できるのであって、それには相応の費用(経費)が必要になるからである。そのためには、PM会社が物流倉庫の運営、維持、管理にかかわる業務を明確にして、それらにかかる費用(経費)を基にPMフィーを算出する必要があるといえよう。

 

 そのためには、まずPM業務を受託する物流倉庫について、分類や整理をしなければならない。これは、前述のようなPM業務の明確化に直結する作業だ。物流倉庫には様々なタイプのものが存在するが、それぞれ管理内容に違いがあるために、かかる費用を正確に算出してPMフィーの見積りを出さなくてはならない。

 物流倉庫の分類方法は用途によるものが一般的で、在庫型のDC(ディストリビューションセンター)、通過型のTC(トランスファーセンター)、流通加工・在庫型のPDC(プロセスディストリビューションセンター)の3種類が基本になる。このほかにも、通信販売業が商品の管理、ピッキング、配送を行うFC(フルフィルメントセンター)や、デポ(小規模倉庫)といった物流倉庫もある。

物流倉庫の種類

 しかし、PM業務は物流倉庫の用途によって差異が出るわけでない。建物の形状やテナント数の違いといった要素に左右されるため、以下の3つに分類することができる。

<ボックス型>

 トラックは1階のプラットフォームで荷受けと荷降ろしをし、荷物はエレベーターで上層階に上げる。建物容積を大きくとることができるので、効率的な土地活用が可能。通常3~4階程度の建物であるが、作業性を考慮した1~2階程度の低層タイプもある。

<スロープ型>

 スロープを設置することで、上層階にトラックが直接侵入できる。例えば4階建てであれば、スロープを使用してトラックは3階に上がることができ、1~2階や3~4階はエレベーターを使うといった構造になる。

<ランプウェイ型>

 各階にトラックが着くようにする場合は、ランプウェイ型にすることが多い。

テナント数での分類

 さらにこれをテナント数で分類する。ボックス型にはシングルテナント型(BTS)とマルチテナント型がある。

<シングルテナント(BTS)とマルチテナント>

 シングルはテナントが1社なので比較的管理しやすいが、マルチは複数のテナントが入っているために様々な調整が必要になり、PM業務は複雑になって難易度があがる傾向が強い。スロープ型はマルチが一般的だが、シングルの場合も存在する。一般的に、ランプウェイ型はテナントが複数のマルチで、大型の倉庫である場合が多い。
 また、倉庫内に冷凍冷蔵設備が有無の分類も必要である。これは、設備をもたない常温(ドライ)タイプ、冷凍冷蔵タイプ、その両方をもつ混在タイプに分けられる。

 以下で、各タイプにおけるオペレーションの考え方について触れることにしよう。
(つづきは本書で)

物流不動産(常温倉庫・冷凍冷蔵倉庫)のプロパティマネジメント資料集

物流不動産(常温倉庫・冷凍冷蔵倉庫)のプロパティマネジメント資料集

 

●A4判/縦型/108頁
●定価99,000円(本体90,000円)
●2023年7月31日発刊

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