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――デジタル遺品を考えるシンポジウム

社会的重要度が高まる「デジタル遺品」
取り巻く諸問題と求められる生前対策

「第5回 デジタル遺品を考えるシンポジウム」(主催:デジタル遺品を考える会)が、2023年12月7日、東京・神保町のインプレスセミナールームで開催された。
シンポジウムには約50人が参加し、故人のデジタルの持ち物「デジタル遺品」の現状と知見を共有。
この稿ではそのなかからデジタル遺品を考える会・代表の古田雄介氏、相続問題の紛争予防対策に注力する弁護士の伊勢田篤史氏の講演内容をまとめた。

デジタル遺品にまつわる3つの
エピソードから見えてくるもの

 「今のままデジタルが遺品になると何が起こるのか?」と題した古田氏の講演では、3つのエピソードから今後のデジタル社会に向けて考えるべきことを洗い出した。
 1つ目は「70歳代の夫が亡くなり、遺品のスマートフォンが開けない」という妻からの相談だった。
 古田氏はパスワードが不明で故人のスマホやパソコンにログインできないトラブルは昔から最も多い問題であると述べ、パスワードなしで開く方法は通信キャリアもメーカーももっていないこと、一定回数パスワード入力を誤ると設定によっては初期化する機種があること、最近のパソコンはハードディスクを別の筐体に入れ替えて対応することがむずかしくなっていると指摘。
 さらに、統計データでは70歳以上の1,481万人がインターネットを利用しており、この2年で200万人以上ふえているため、高齢者がよりデジタル機器を使うようになり、遺品になるケースも珍しいことではなくなっていると指摘した。
 2つ目は、「60歳代の親の遺品整理中、謎のサブスク契約があり解約できません」という相談。サブスクの料金をクレジットカード等で自動引き落としにしている人が多いが、遺族が故人のカードを止めようとしても「債務が残っているから」と門前払いになるケース、カードを止めても年額・月額の自動引き落としが続いたり、サブスク運営会社から請求書が送付されたりするケースがある。

 最後は、「10年前に亡くなった子どものSNSにヘイト的な投稿を見つけたが、削除申請が通らない」というエピソード。無料で使えるインターネット上のブログやSNSの投稿はそのまま残っていることが多く、10年前は冗談として捉えられていた内容が、現在の認識では「差別的な言い方」「自殺を助長する内容」などと炎上を招くリスクが高まっているとし、「デジタル遺品は残っていく、世の中の常識や感覚は早いペースで変わっていく。新しいサービスもふえ、さまざまなことを懸念しなければならない機会がふえた」とした。
 さらに、「新しいデジタル遺品」として「デジタル故人+生成AI」「デジタル証券」「NFT」「デジタル遺言」についてふれ、デジタルに関する死後のことは目まぐるしく変わっているにもかかわらず、「デジタル遺品は見えにくい」という問題は10年20年前から変わっていない。だからこそ、本人が最重要な鍵について「見える化」して

おくことが理想という。しかしながら、国民全員がそうした努力をするのは現実的ではなく、「さまざまな業界で知恵を絞り、カバーしていくために、このシンポジウムをこれからも続けていきたい」と結んだ。(続きは本誌で・・・)

 

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