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――小早川 仁氏 (株)学研ファミーユ代表取締役会長

介護の実績武器にJV設立し葬儀参入
今春目処に神奈川県から本格展開

小早川 仁氏 学研ファミーユ代表取締役会長
小早川 仁氏 学研ファミーユ代表取締役会長

2022年10月3日、全国で194(22年12月1日現在)の高齢者施設等を展開する学研グループ傘下の(株)学研ココファン(本社東京都品川区、代表取締役社長兼COO森猛氏)と、(株)きずなホールディングス(本社東京都港区、代表取締役社長兼グループCEO中道康彰氏)の合弁会社「学研ファミーユ」が新たに誕生した。両社が共同出資する葬祭事業者で、葬儀参入の狙いと今後の展開について、(株)学研ファミーユの代表取締役会長に就いた小早川仁氏に聞いた。

「学研は社会に貢献を」
創業者の遺志を守り介護業界へ

 (株)きずなホールディングス(以下、きずなHD)との合弁会社・学研ファミーユについて発表してから、各方面からさまざまな声が寄せられています。その反響の大きさに驚かされるとともに、約20年前、高齢者支援事業(介護事業)に学研が参入したときのことを思い出しました。
 学習事業を展開している学研が介護事業に参入したのは2004年のこと。「なぜ学研が介護業界に?」と、突然の異業種への参入に驚かれる人も多かったのですが、学研の創業時から受け継がれているマインドは、社会の課題解決に取り組むことでした。創業した1946(昭和21)年当時は、戦後間もない頃で、「今後の日本を担う子どもたちには良質な教育が必要」という思いから、教育事業に取り組んだのです。
 介護事業への参入も、「少子高齢化」という日本の社会問題に取り組むため、きわめて自然な流れでした。少なからず社内でも不安の声はありましたが、学研の創業者である古岡秀人(1908〜94)の遺した「少子高齢化のなかで、学研は社会に役立つように貢献していくべき」という言葉に後押しされ、事業化に至ったのです。
 当時、まだサービス付き高齢者向け住宅(サ高住、2011年に開始した高齢者賃貸住宅の一種)の制度が創設される前。有料老人ホームというと、経済的な負担を心配する声も多かったため、一般的な年金受給者でも無理なく入居できる高齢者向けの住宅をつくりました。いまはサ高住をはじめ、訪問介護事業所、デイサービスなど全国で194拠点を展開。グループのメディカル・ケア・サービス(MCS)が運営するぶんを含めた拠点数では、国内で第1位、世界でも第2位となっています。
 現在では、売上高のおよそ半分は、医療福祉サービス(高齢者支援事業や子育て支援事業を含む)が占めるほどになりました。従業員の約65%も医療福祉サービス従事者です。かつて「学研といったら教育」だったイメージが、いまでは「介護といえば学研」と言われるまでになっています。

社員や入居者家族からの声を受け
エンディング事業化プロジェクト設立

 学研がライフエンディング事業(葬祭業)を本格的に検討しはじめたのは2020年のこと。学研ココファンの若手社員から「学研もライフエンディングに参入するべきだ」という声があがったのです。また、ほぼ同時期に、何人もの入居者様のご家族から届いた「長く学研の介護サービスを利用し、親子ともとても満足している。最後の見送りまで学研にお願いできないか」というお手紙もきっかけの1つになりました。
 社員の声と入居者様からのお手紙に心を動かされ、20年にエンディング業界への参入について調査・検討する「ライフエンディング事業化プロジェクト」を発足しました。メンバーは部署を問わず若手を中心とした約10人。多死社会に関するデータ、マーケティング調査などを行ない、多角的にライフエンディング事業のリサーチをしました。
 同時に、ココファン事業所長にも「学研グループがライフエンディングに積極的に関与することをどう思うか?」をアンケート(回答者数103人)。

図表1 学研グループがライフエンディングに積極的に関与することについてどう思うか?

 

図表 学研グループがライフエンディングに積極的に関与することについてどう思うか?

 時にはご家族以上に、入居者様と濃密な時間を過ごし、さまざまな悩みや思いを打ち明けられることも多い彼らが出した答えは、88%が「良い」というものでした(図表)。
 実際の入居者様やそのご家族219人にも、葬儀に関するアンケートを行ないました。その結果、希望する葬儀の内容として、アクセスしやすい場所で、小規模で故人を偲ぶ葬儀が求められていることがわかりました。学研ココファンの入居者様のほとんどは、その地域に住んでいた人たちです。地域に密着し、入居者様に寄り添い、趣味や好みも熟知するスタッフがケアを行なう学研なら、地域の友人・知人も参列しやすく、入居者様やご家族が希望するお見送りを実現することができると感じました。
 市場調査の結果や今後迎える多死社会、現場で働く社員や利用者・そのご家族の声、学研の開発力・運営力など、調べれば調べるほど、なぜもっと早く参入を検討しなかったのかと後悔するほど、エンディング業界への参入を真剣に考えなければならないと実感するようになりました。

家族葬のパイオニア企業
きずなホールディングスとJV設立

学研ココファンときずなホールディングスによるJV設立

 エンディング業界への参入を決めたものの、そこは未知の業界。介護事業に参入したときもノウハウはなく、すべて手探りで一から構築したため時間がかかりましたが、多死社会を20年後に控えたいま、時間は足りません。そこで、先行して葬祭業に取り組み、質の高いサービスを提供している事業者とパートナーシップを組むことが必要だと考えました。
 今回、学研がパートナーに選んだのは、「家族葬のファミーユ」ブランドを全国に展開するきずなホールディングスです。01年、家族葬のファミーユをスタートしたきずなHD(当時の社名は(株)エポック・ジャパン)は、家族葬の先駆けといっていい存在で、直営の葬祭会館を全国に120か所展開(22年12月末現在)しています。さまざまな事業者とも話合いを続けるなかで、“お葬式を家族のものに。”と

いうスローガンや、葬儀に関する考え方、葬祭業界に関する思いなどが、「ライフエンディング事業化プロジェクト」と検討した内容ととても近いことが決め手となりました。
 また、事業として立ち上げるからには、家族葬会館を何か所開発できるのかというのも大きなポイントでした。きずなHD単体で30年までに直営300会館をメルクマールとしていますが、開発に向けてのリソースがあればさらに上積みできるという中道社長の見立てもあり、それなら約20年にわたって全国に約500棟を建ててきた私たちの開発力でブースト(押し上げる)することが可能です。お互いを得意分野で補い合い、ともに発展するために、資本業務提携して学研ファミーユという合弁会社をつくることになったわけです。

 

(学研ファミーユの今後の展開は本誌で)

(株)学研ファミーユの概要

所在地/東京都品川区西五反田2-11-8
設立/2022年10月3日
代表者/小早川 仁(代表取締役会長)
    中道康彰(代表取締役社長)

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