――PATRIZIA
PATRIZIA(パトリシア)は、主に欧州の機関投資家の資金を運用する、ドイツを本拠とする不動産・インフラの投資運用会社である。グローバルの運用資産残高は570億ユーロ(約8兆円)の規模。2019年に日本法人を設立し、AUMを今後5年間で3,000億円にまで拡大させる構えだ。
直近ではアジアの大手機関投資家と共同で1,500億円規模の住宅特化型ファンドを設立し、住宅を2物件取得した。
PATRIZIA Japan の代表取締役社長中元克美氏は「欧州と比べた金利や地政学リスクの低さや、世界で2番目に大きい不動産証券化市場、取引に関わる権利や法制度の充実ぶりがポジティブに働いている」と話す。
物件の取得・運用に際しては「脱炭素」「デジタル化」「人口動態の変化」「都市化」という4つのメガトレンドを念頭におく。運用物件における脱炭素への取り組みのほか、デジタルツールを用いた立地条件の検証、都市化により人口増加の続く4大都市圏へのフォーカスを図る。
アセットタイプではオフィス、住宅、物流施設、ホテルに注目。コア物件だけでなく、築古でも改修工事によりバリューを高める物件、デベロッパーとの協業による開発型案件を含め検討する方針。
オフィスについてはCBD以外の都心部や郊外ターミナル駅に立地する中規模ビルが有望とする。絶対数が多く出社率も高い中小企業と、サテライトオフィスやシェアオフィスを求める大手企業の両方のニーズを取り込めると考えるためだ。
住宅については、西東京ならファミリー、東東京ならシングルといったように地域特性に合わせ物件を探していく。機動的なバリューアップを実施するうえで、運用中の物件では専有部と共用部合わせたフルリニューアルで賃料を2~3割アップさせた事例もある。
物流施設については、EC市場の成長余地をふまえ、ラストワンマイル需要に対応した都市部の中小規模倉庫に関心をもつ。そのほか建て替え需要増大が予想される冷凍冷蔵倉庫にも興味があるとする。
ホテルについても、観光需要の復活が大きく見込めることから投資対象に位置づけており、4大都市圏を対象に検討する考え。
物件の取得ルートに関しては、フォワードコミットメントや共同投資を含め、さまざまな手立てを講じ案件を発掘したいとの見方を示す。
「海外投資家向けのインバウンド投資と日本の投資家向けのアウトバウンド投資を双方向で行い、ESGを踏まえた欧州系らしい投資運用事業を展開したい」と中元氏は話している。