栗原祥之氏[プロロジス]に聞く
【試し読み】LEADER|トッププレーヤーの着眼点
プロロジスといえば、日本で先進的物流施設の市場を開拓してきた代表的なプレイヤーだ。
昨今の市場環境はどのように見えるか、競合他社が増えるなかでどんな領域に可能性を見出しているのかを聞いた。
プロロジスパーク盛岡。東北エリア最大級となる延床面積10万㎡弱の規模をもちながら、稼働率約80%、かつ相場より1,000円/坪以上高い賃料水準を確保している
コロナ禍の最中、物流施設市場はまさしく“作れば埋まる状況”だった。好調ぶりをみて国内外の投資家・デベロッパーが一気に参入、2021~2024年にかけて大量の床が供給された。
需要は依然として堅調だが、この大量の新規供給床の消化に時間を要しているのが現状である。建築コストの高騰も悩みの種だ。
一方で、投資家の取得ニーズには衰えがみられない。国内外のREITやプライベートファンド、生損保、事業会社による大型施設の取得が相次いでいる。これは先述した需要の拡大のほか、リースアップ後の稼働の安定性を高く評価しているためである。キャップレート低下が見込みにくい状況下でも、経済がインフレ局面に入ったことで賃料のアップサイドが期待できるようになれば、取得意欲は一層高まると考えられる。当社でも数年前から、契約更新時にCPIと連動した賃料設定の導入を協議する条項を設けた。入居企業側の賃料交渉に対する姿勢も以前より和らいできたと感じている。
当社は「プロロジスパーク」の名称で、大都市郊外を中心に120棟・約804万㎡の物流施設を開発してきた。そのひとつが都市型物流施設「プロロジスアーバン」シリーズである。ECの伸長とともに、より居住地に近いラストワンマイルの物流需要が伸びることに着目したものだ。これまでに東京23区で6棟を開発済、1棟を開発中。延床面積は、それぞれ5,000㎡強~3万㎡弱である。
同シリーズはラストワンマイルの物流需要を当て込んで企画されたが、開発・運営を進めていくうちにさまざまな床需要があることが明らかになってきた。具体的には自動車のメンテナンス作業場、家電の部品保管や組み立てスペース、撮影スタジオ、R&D施設、セントラルキッチンなどさまざまだ。
ユニークな取り組みとして、「プロロジスアーバン東京押上1」(墨田区)ではインキュベーション施設「inno-base(イノベース)TOKYO-OSHIAGE」を開設した。スタートアップや大企業の新規事業立ち上げを支援するとともに、当社が運営する他施設の入居企業とのコラボレーションを促進する。
竣工済みの6施設の稼働率は、ほぼ100%である。物流系企業にとって人口密集地にあること、そのほかの企業にとって一般的なオフィスでは対応できない使い方を受け入れることから、プロロジスアーバンは唯一無二性があり入居企業との粘着性が強い。このため、オフィスと倉庫の間くらいの賃料水準を狙っていける。
当社がもうひとつ注目しているのは、三大都市圏以外の地方での展開である。背景にあるのは、トラックドライバーの時間外労働制限で長距離輸送がむずかしくなる「2024年問題」だ。これにより、トラックの中継拠点として地方でも大型の先進的物流施設が成立するとみた。
〈地方での展開戦略と開発コスト高騰への対策については本誌で〉