ヒトではなく、あくまでワンちゃんファースト
愛犬のためのフルサービスホテルが右肩上がりのパフォーマンスを実現できる理由とは
CASE STUDY①宿泊施設
ラグジュアリーからリゾートまで、フルサービスホテルから宿泊特化型ホテルまで、「ヴィラフォンテーヌ」を中心に複数のホテルブランドを展開する住友不動産ヴィラフォンテーヌ㈱は22年2月、増上寺や東京タワーにほど近い芝公園エリアに〝愛犬のためのフルサービスホテル〞をコンセプトとする「inumo芝公園byVillaFontaine」を開業した[別表]。
住友不動産㈱が取得した、㈱芝パークホテル所有・運営の「芝パークホテル151」を同社がリノベーションした。コロナ禍の真っ只中で宿泊需要の先行きを見通しにくいなか、愛犬を自然のなかで遊ばせるために都心から郊外に出かけるときには愛犬連れで泊まれるホテルはある一方で、都心に来るときの宿泊場所に愛犬家が困っていることに着目した社内公募のアイデアを事業化。都心における〝ワンちゃんファースト〞のホテル市場を開拓した。
「ベンチマークもなく苦労しましたが、パイオニアとして、われわれがスタンダードを創るんだという意気込みで取り組んでいます」(マネージャー田中美佐緒氏)。
愛犬連れも泊まれる客室がいくつかある(または専用のフロアがある)ホテルと、愛犬同伴特化型の同ホテルには大きな違いがある。一般の宿泊客と接触する機会がないため、フロントや廊下では愛犬をケージに入れなければならないなどといった制限はなく、館内すべての場所を愛犬とリード付きで歩き回ることができる。全員が愛犬連れのため会話や交流が生まれ、気がねなく過ごすことができるなど、愛犬と愛犬家に特化した付加価値の高い各種サービスを提供できる。愛犬連れでの東京観光を快適に楽しめる拠点として、また、都内近郊に住む人が愛犬とリフレッシュする場所として、まったく新しいホテルステイを提案している点がユニークだ。
2〜9階に展開される客室は6タイプ・全70室(客室面積はすべて30㎡)。各部屋にはウェルカムおやつ、粘着クリーナー、食事用ボウル、足拭きウェットティッシュなどの愛犬専用アメニティが用意される。地下1階には76㎡の全天候型ドッグラン、トリミング・グルーミングを提供するサロンに加え、外出時に便利な一時預かりサービスも。
「ミュージカルやコンサートを鑑賞しに行く際にそのまま無料で預けられる利便性の高さはアンケートでも一番満足度が高くなっています」(田中氏)。
また地上2階には、ドッグキッチンとドッグラウンジを設けた。ドッグキッチンには電子レンジやIHなどを置く。これにより物販コーナーで購入したレトルトのワンちゃん用の食事を湯煎できるほか、療養食など限られたものしか食べられない愛犬のために自宅から持参した食事を温めることができる調理スペースとして活用される。ドッグラウンジは別途有料の貸切個室(30㎡)となる。広い場所で愛犬を遊ばせたいというニーズや、宿泊者が友人と面会するためのスペースとしての利用ニーズに応える。1階に併設する、愛犬と一緒に食事を楽しめるイタリアンレストラン「WandeShiba」のメニューをテイクアウトして、ドッグラウンジでハロウィンやクリスマスにパーティなどを楽しむグループ利用もふえてきているという。
料金は…<続きは本誌にて>