株式会社トータルプランニング
MYTHグループ 全国50店舗・年間利用者200万人を誇る
レジャーホテル[再生]のプロデュースワーク
「新春インタビュー」
代表取締役 脇田 克廣 氏
レジャーホテル経営に携わって40年を超える脇田会長は、常に現場に入り、店長と現場スタッフと関連業者の方々とともにお客さまから支持されるハード×ソフト×オペレーションの三位一体の再生を目指している。その信条はレジャーホテルを好きになること。そして「情熱」と「責任感」を心に刻み、不動産金融商品としてレジャーホテルの価値を高め続けてきた。これまでのレジャーホテル “再生” のプロデュースワークからその本質について㈱トータルプランニング代表取締役会長の脇田克廣氏に伺った。
企業名 | 株式会社トータルプランニング |
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TEL | 06-6776-0003 |
所在地 | 大阪市天王寺区上汐3-2-16 |
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最新リニューアル事例(HOTEL MYTH -abc-)
見逃されがちなオペレーション投資
効率的で働きやすい職場環境の実現を
――新型コロナウイルス禍の2020年に6ホテルのリニューアルを実行されました。レジャーホテル“再生” のリニューアルをどのようにお考えですか。
脇田 レジャーホテルの再生にあたって重要なのは「ハード」「ソフト」「オペレーション」の三位一体となったお客さまの視点にたったリニューアルと運営体制の確立です。リニューアルの投資も、これらのバランスを十分に考えたうえで、計画を策定しなければなりません。
これまでレジャーホテル業界では「ハード」に集中してリニューアル投資をしてきました。確かに、需要が旺盛な20年前までは、設備や客室デザインを新しくするだけで十分な集客が確保できました。またリニューアル資金もすぐに回収できるので、金融機関も「ソフト」「オペレーション」を重視せず、「ハード」のリニューアルに融資をしていただけました。
しかしいまはレジャーホテルは築30~40年と老朽化が進んでいます。「ハード」だけを新しくしても、集客できるのは、せいぜい2~3年でしょう。経営者がリニューアル投資資金を回収するためには、10年や20年という中長期的視点で、安定したホテル運営を目指さなければなりません。そのためには「ハード」への投資だけでは不十分です。
――リニューアル投資でも、「ハード」「ソフト」「オペレーション」のバランスが重要だということですか。
脇田 そうですね。なかでも、もっとも見逃されがちなのが「オペレーション」の重要性です。私は、レジャーホテルを不動産金融商品として捉えレジャーホテルの価値は、「オペレーション」によって大きく左右されると考えています。
――「オペレーション」のリニューアルはどのような部分に投資されるのですか。
脇田 たとえば、リニューアル時に「お客さま動線」のブラッシュアップを図る経営者は多いですが、それと同様に「スタッフ動線」のブラッシュアップや「職場環境の改善」にも注力すべきです。
近年のレジャーホテルは、飲食メニューの強化や事前予約の受付など、お客さまへのサービスが多様化しています。また、新型コロナウイルス禍では客室内の清掃・消毒も、従来以上に時間をかけて行なわなければいけません。しかし一方で、スタッフ人員の確保は年々むずかしくなっています。人材難があきらかです。
こうした状況下では、最小限のスタッフ人数で、最大限のサービスを提供できる体制を整えなければいけません。フロント・厨房・リネン室・休憩室などバックヤードのリニューアルに力点をおいています。そこで重要なのが、効率的で動きやすいスタッフ動線であり、スタッフの作業負担を軽減し働きやすい職場環境への改善なのです。
弊社の直近のリニューアルでは、フロントと厨房、ランドリーを1か所にまとめて配置することで、お客さまが少ない時間帯には、これらの業務を1人のスタッフで行なえる体制を整えました。作業効率向上と人件費削減の双方を実現しています。
人件費は、たとえば単純に3人分を削減したとすると、1か月で50~60万円、年間で600万円、10年間なら6,000万円が削減できます。そのぶんを返済にまわすことができます。
また弊社ホテルでは、「リネンモニター」や「監視カメラモニター」をスタッフ動線の各所に配置して、ホテル全体のリアルタイムの動きを、スタッフ全員が情報共有できる環境をつくっています。いま、ホテルのどこで、何が起こっているのかがわかれば、お客さまやオペレーションの不測の事態に対してもスタッフは迅速に、効率的に対応することができるからです。
このように、お客さまから見えない部分へのリニューアルをすることで、情報共有し、チーム一丸となって自律的で円滑なオペレーションが可能となります。
経営者が現場をよく知ること
スタッフに経営姿勢を示すことが重要
――リニューアルコストは、工事が進むにしたがって、当初予算から膨らんでしまうケースがよくありますね。
脇田 私の経験でも、リニューアル工事の最中に「ここも修理しなければ」というポイントが見つかるケースは多いです。大切なのは、それが本当に“今すぐ”修理しなければいけないポイントなのか、その場でジャッジすること。ですから、コスト管理者である経営者はできるだけリニューアルの現場に立ち会う必要があります。
リニューアル時に限らず、経営者はできるだけ現場に顔を出し、現場のことをよく知らなければいけません。
また、経営者や支配人は常に現場のスタッフに対して、自身の経営姿勢をしっかり示すことも、スタッフの「意識改革」とモチベーション向上にとても重要です。経営者が、ただ“金儲けの道具” としてしかレジャーホテルをみていないと、スタッフはそれを敏感に感じ取ります。限られた「人材」を「人財」に変えていかなければなりません。これはレジャーホテルに限らず、どの事業でも一緒だと思います。
―― M&Aで引き継いだスタッフのモチベーションをどう図っていますか。
脇田 まずは、スタッフに、自分が働いているレジャーホテルを“好き” になってもらうことです。そのためには、経営者や支配人も、レジャーホテルが“好き”であることを示さないといけません。そのうえで、効率的で働きやすい職場環境を整備し、オペレーションの質的向上を図るのです。
オペレーションの質的向上が図られたレジャーホテルは、その気持ちがお客さまに伝わり、お客さま満足(CS)が生まれ、リピーターとなり、好循環が生まれます。多くのお客さまに利用され、喜んでいただけます。こうしたお客さまの反応が、スタッフのモチベーション向上(ES)に大きく寄与するのです。
―― 2020年のコロナ禍で日本社会は大きく様変わりしました。そのなかでレジャーホテルはどのようにして生き残りを図ればいいのでしょうか。
脇田 先日新聞で読んだのですが、経営学者ピーター・ドラッガーは「企業の目的は顧客の創造である」。人々のもつ潜在的な欲求に応えるモノやサービスを開発したとき需要が生まれる。しかし顧客は自らの欲求に無自覚なこともある。彼らをいかに誘引し市場を開拓するのかが重要だという言葉に惹かれました。
翻って考えてみるとレジャーホテルはコロナ禍でも底堅いニーズがあることが証明されました。あらためて生活圏の人間の根源のニーズを満たすレジャーホテルのお客さまの潜在的な欲求に応えるモノやサービスを常に提供することが大切だと思います。
私たち1人1人の経営者がすべきことは、やはり「ハード」「ソフト」「オペレーション」の三位一体となった質的向上を図り、お客さまからもスタッフからも愛されるホテルづくりを進めていくことなのではないでしょうか。
――本日はありがとうございました。