あすか信用組合

[金融]

顧客ごとに財務状況と経営手腕を検証し、
求められる融資プランを積極的に提案

「新春のご挨拶」
常務理事 木村 弘
 

長引く新型コロナウイルス禍のなかレジャー・サービス企業の財務状況が悪化している。東日本を営業エリアとして、長年にわたりレジャーホテル業界への融資を行なってきた、あすか信用組合。コロナ禍においても、いち早く元本返済猶予の方針を決定(3月)し、顧客の財務状況にあわせ、柔軟な融資対応でホテル経営をサポートしてきた。2021年以降のコロナ禍におけるレジャーホテル融資の要点、ホテル経営のポイントについて伺った。
 

企業名

あすか信用組合

TEL

03-3208-5101

所在地

東京都新宿区歌舞伎町2-32-9

URL

https://www.asuka-c.jp


融資営業部 ローンセンター 課長
田澤 尚士

コロナ拡大直後から顧客状況を確認
元本返済猶予と追加融資へ柔軟に対応
 
――2020年、コロナ禍のレジャーホテル業界への融資の取組みについて。
 
田澤 3月初旬からの新型コロナ感染症の拡大を受けて、レジャーホテルを経営する融資先すべてのお客さまに連絡をして、経営状況を伺いました。3月中旬頃までは些少の減収との声が大半でしたが、4月の「緊急事態宣言」後、一気に大幅な減収傾向に入っていきました。ホテルオペレーターや関連企業も受注の減少、人材確保の悪化、家賃や運営フィーの未収(減少)など、さまざまな悪影響が生じていました。そこで未曽有の危機と判断し、緊急対策として、当組合から元本返済の猶予を提案し、4月中には手続きを完了しました。
 
黒﨑 お客さまの要望をヒアリングしていくと、レジャーホテルに対する対策融資と保証制度が立ち遅れている状況がわかりました。運転資金等お借入れを希望されるお客さまには、プロパー融資での対応が可能かを、前向きに検討させていただき可及的速やかに融資を行ないました。新たな融資商品を設けるのではなく、お客さまごとに状況をみながら対応していきました。
 
――レジャーホテルは、特別貸付が受けられない状況にもあります。個人消費が落ち込みコロナ危機を迎えるであろう2021年から2022年はどのような融資対応を取られるのでしょうか。
 
田澤 コロナの感染状況を注視しながら、基本的には3月から始めた施策を継続し、お客さまごとに柔軟な対応をしてまいります。経済危機は「キャッシュ・イズ・キング」で、資金繰りが最優先されます。財務状況を見極めながら、最大限、お客さまの立場に立って、こちらから能動的に提案を行なっていく考えです。
 
 また、対策融資や保証制度などの動向についての情報提供にも努めていきます。レジャーホテル業界に向けて、きめ細やかなサービスを安定的かつ継続的に提供していきます。
 

顧客満足度を高める日々の運営と
カップル利用の確保が安定経営の鍵
 
――アフターコロナを見据えるとリニューアルや新規購入への積極投資が考えられます。
 
黒﨑 2020年3月以降もリニューアルに向けた融資の実行件数は昨年と変わらないペースで推移しています。逆に、コロナ禍で来館者数が減少している今だからこそ、リニューアルを実施すると決断されたお客さまもいらっしゃいます。来館者が多い平常時に全館休業やフロア休業をして売上げを失うよりも、来館者が減少しているいま、投資をしてホテルのバリューアップを図るという考えです。コロナ禍だからといって、計画したリニューアルは止まっていません。ただ、新規ホテル購入のお申込みは例年と比較し大幅に減少しております。
 
田澤 新規購入の動きは、金融機関によるレジャーホテルに対する元本返済猶予が行なわれており、平常時であれば売却に踏み切らざるを得ないホテルも踏みとどまっており、手ごろな物件が出ていない状況が続いている印象です。
 
――コロナ禍のリニューアル・購入における資金融資の条件はいかがですか。
 
黒﨑 リニューアルによって稼動率をアップし、新規購入で利益を出せるのであれば、投資としては有効です。当組合としては効果のあるリニューアルか否かを見極め、融資の条件を判断しています。
とくに、①これまでの経営実績(トラックレコード)、②リニューアル後の事業計画の検証が中心となります。さらに、③既存施設の売上実績や競合ホテルの売上動向からみる市場分析と、事業計画の売上目標を比較検討し、④お客さまの経営手腕などで判断します。また、レジャーホテル業界へ新規参入される方の審査で重要視するのは、どのようなオペレーターと組むかです。レジャーホテルは特有の運営ノウハウが求められますので、経験豊富なオペレーターからのアドバイスが不可欠です。いずれにしても、大前提として、お客さまの事業が成り立つのかを重要視しています。
 
――借換資金についてはいかがですか。
 
田澤 対象ホテルのこれまでの収支を拝見して、ホテルのポテンシャルやオーナーさまの経営実態を把握し、借換金額の妥当性、返済の検証を行ない、対応の是非を判断させていただいております。
 
―― 2021年以降、レジャーホテルの経営状況の回復についてはどう予測されていますか。
 
黒﨑 「レジャーホテルは不況に強い業界」を実感しています。私は都心部を担当していますが、都心繁華街立地の回復が遅く、地方の方が早いという印象です。デリヘル利用が中心のホテルは厳しい状況が続いていますが、都心、郊外を問わず、カップル利用のホテルは減収幅が非常に少ないです。一部のホテルでは、3密を避けた「プライベートレジャーホテル空間」として売上げを拡大した例もあります。
 
――コロナ禍を超えて、お客さまから選ばれるレジャーホテルへと経営革新していくため、取り組むべき課題はなんでしょうか。
 
田澤 まず、前提としてウィズコロナ、アフターコロナでは、「7割経済」といわれるように減収傾向が長引くことを想定する必要があります。そのうえで、今一歩踏み込んだ経費の見直しを図ることが重要です。
 
黒﨑 数多くのホテルを視察したなかで、大きな投資をせずに随時改修を行ない、イメージアップを図ることで、集客力を高めて売上げを伸ばしている堅実なホテルも数多くありました。
 
 設備投資だけでなく日々の運営の見直しも効果的だと思います。コロナ禍だからこそ清掃の徹底、効率化などお金をかけずに取り組める見直しがホテルの魅力アップにつながるのではと考えます。
 
田澤 デリヘル利用がメインで稼動率を維持しているホテル運営から、一部の客室をカップル利用へとシフトするのも有効だと思います。コロナ禍においてはデリヘルユーザーが多いホテルの減収傾向が根強い一方で、カップルの利用が多いホテルについては、些少の減収にとどまっていた状況が伺えました。もちろん、コロナが収束すれば、デリヘルユーザーが戻り、売上げの回復が見込めるでしょう。しかし、コロナ禍に左右されにくい、レジャーホテル本来のユーザーであるカップルを一定数取り込むことができれば、感染症が再拡大しても収益の下支えになり得ると考えます。時代の変化に適応できる、多様性を重視したビジネスモデルへの再構築が求められます。
 
――今後、レジャーホテルがお客さまから支持される経営とはなんですか。
 
田澤 継続的に高い売上げを維持しているホテルオーナーの共通点は経営への情熱にあふれていることです。お客さまの満足度を上げることを最優先に考え、コロナ禍でも「3密対策」や「衛生管理」など安心・安全を訴求する対策を実施されています。
 
 また「働く環境の整備」として、リネン室、休憩室、厨房などのバックヤードの充実や従業員教育も目的をもって実施し成果をあげています。プライバシーが守られ、安心して清潔に過ごせる顧客満足度の高いホテルこそが、ウィズコロナ、アフターコロナにおいて求められるのだと思います。
 
――本日はありがとうございました。

融資営業部 ローンセンター 係長
黒﨑 拓也