tripla㈱
自社サイト比率を高める予約エンジンなど主要4サービスで
ホスピタリティ産業のDX推進をサポート
導入施設2000を超える
宿泊予約システム
tripla㈱は、宿泊施設向けに自社予約比率向上をサポートする予約エンジン「triplaBook」、多言語で問合せに対応するAIチャットボット「triplaBot」、それらと連携したCRM/マーケティングオートメーションツール「triplaConnect」、広告運用代行サービス「triplaBoost」などのITソリューションサービスを提供、宿泊業界のDX推進や運営効率と収益性の向上に貢献している。
公式サイトの運営・自社予約の増加をサポートするシステムだけではなく、今年1月には宿泊予約に特化したOTA「triplaai」の提供を開始、自社予約とOTAの両輪でサービスを提供しているのが、他のホスピタリティIT業界のプレイヤーとの大きな違いだ。
同社は2015年4月、代表取締役CTOの鳥生格氏によって創業され、同年9月に現代表取締役CEOの高橋和久氏が参画した。「2人ともeコマース業界、それもファッション事業出身で、宿泊業界については無知でした」と高橋氏は語る。
当初は飲食店のメニューオーダーアプリを開発していたが、どの飲食店も興味を示さなかった。時代を先取りし過ぎたのだ。創業翌年には資金調達が必要になり、調達先の1つにあるホテルグループがあった。ちょうどインバウンドが注目されはじめた時期で、そのホテルから受けた多言語対応に関する相談がきっかけとなり、AIチャットボット「triplaBot」を開発、17年1月にリリースした。
「triplaBot」を運用していくなかで導入ホテル側から出た要望が「チャットで予約も取れるようになれば」というものだった。予約対応を行なうには、空室在庫を管理するサイトコントローラー事業者とのシステム連携が必須となる。こうした連携は通常まず認められないが、「triplaBot」の実績が認められてサイトコントローラーとのシステム連携を実現、チャットでの予約対応を可能にしたのだ。
この経験が予約エンジン「triplaBook」の開発につながる。同社は京浜急行電鉄㈱によるアクセラレータープログラムの外部パートナーとなり、19年7月にプロトタイプを開発、京急側では翌月から2施設で運用したうえで同年末までに約60施設で「triplaBook」を導入した。その後「triplaBook」はセンチュリオンホテルやホテルウィングなどのチェーン系ホテルにも採用され、契約数は2020年10月期で366施設に達し、その後21年10月期には1000施設を超え、22年10月期1620施設、23年10月期には2000施設超に達している。
会員登録の簡素化で
リピーターづくりにも貢献する
シェア急拡大の背景として高橋氏は業界のクラウド移管の遅れを指摘する。「eコマースの分野では2010年代の初めにはクラウド移管が終わっていましたから、19年の段階で進んでいないのは驚きでした。これでは外国から日本のホテルのサイトで予約しようとしたとき、遠く日本にあるサーバに接続する必要があり、時間がかかり過ぎます」と高橋氏。
インバウンド獲得のためにクラウド移管は必要条件であり、それができている同社システムはホテル業界が待ち望んでいたものだったのだ。
もう1つの背景として挙げられるのが、会員制度のあり方だという。どのホテルでもリピーター確保のため会員登録促進に注力するわけだが、利用客側にとってはその登録の手間が面倒だ。高橋氏は「生年月日・年齢・性別・会社名・住所・郵便番号・既婚/未婚など、登録に本当に必要なのかという事柄まで聞かれるくらいなら『そのままゲストとして予約すればいい』となってしまいます」と話す。
そこで同社では、メールアドレスと名前、電話番号のみで登録できる会員制度をホテルに提案したり、入会時にFacebookやLINEアカウントでログインできるソーシャルログイン機能をいち早く取り入れるなど簡便化を進め、現在では初めて「tripla Book」で予約するユーザーの約70%以上が新規会員に登録するまでになった。
チェーンでも単館でも対応できることも同社サービスの大きな特徴だ。予約については、ブランド力のある大手ホテルチェーンほど自社サイト、ブランド力の弱い単館ホテルや小さい旅館ほどOTAを重視するが、同社では自社成約率を強化したいホテルチェーンにソリューションを提供する一方、集客をOTAに依存するホテルや旅館について、OTAからの宿泊客に次回は公式サイトで予約してもらえる環境づくりのサポートも行なっている。これにより自社公式サイトからの売上げを最大化することで、OTAへ支払う手数料の低減にもつなげている。
導入先からの反響としては、やはり「予約数がふえた」というものが多いという。また「tripla Connect」ではきめ細かに顧客をセグメントし、メールマガジンの発行、さらにLINEやFacebook Messengerからの発信も可能なため、これまで手が回らなかった宿泊後の販促ができるようになったとの声もよく聞かれる。高橋氏は「これらの販促がホテルのブランディングの強化にもつながる」と話す。
23年9月には、ホテルルートインが全339施設で「tripla Book」「tripla Bot」「tripla Connect」「tripla Pay」の主要4サービスを導入した。予約システム・AIチャットボット・CRM/MA・決済サービスのシナジーでより大きなメリットが期待できる。このこともあり、23年時点での同社サービスの導入実績はグローバルで7038施設、国内で3016施設となった。
今後同社は、M&A、既存サービスの拡充、さらにサービスの重層化の3つに注力していくという。
M&Aについては、東・東南アジアへも事業を拡大し、国内外の宿泊産業の発展に貢献することを目指しており、これまでにインドネシアの宿泊施設向けにITソリューションを展開する企業、台湾の宿泊施設向けにチャネルマネージャーや予約エンジンを展開する企業、タイなど東南アジアを中心に予約エンジンを展開するシンガポールの企業などを子会社化している。
既存サービスの拡充については、旅館に向けて、日本独自の業態で、オンリーワンのサービスを志向するというその特性に合わせた対応を強化し、ホテル同様の20%程度のシェア獲得を目指す。
サービスの重層化の例としては、M&Aで得たチャネルマネージャー技術を活用した新サービス「tripla Link」や、サイト構築が困難な地方旅館などに予約システムが一体化したサイトを提供する「tripla Page」などが挙げられるだろう。
「私たちが宿泊業界のDXに貢献できることは、まだまだたくさんあると考えています」と高橋氏は語る。
会社概要
会社名 | tripla㈱ |
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設立 | 2015年4月 |
本社所在地 | 東京都中央区新川1-22-13 |
代表者 | 代表取締役CEO 高橋和久 |
事業内容 | インターネットサービスの企画運営、旅行業 |
URL | https://tripla.io/ |