カソク㈱
●注目企業レポート
高稼動率、高収益を生み出す
アパートメントホテル運営の実際
アパートメントホテル業界の老舗
独自のデータ分析を運営に活かす
2013年1月に創業したカソク㈱はアパートメントホテルの企画、開発、運営を主たる事業とし、現在、東京、大阪を中心として、全国11都道府県で、戸建て貸し切りから最大113室までのホテルを28棟(うち26棟がアパートメントホテル)運営、年間インバウンド宿泊客数約30万人という実績をあげている。
同社は、グループとして不動産仲介から、マンスリーマンションの企画・運営事業、インテリアデザイン事業、物品の製造・卸・小売り事業、インバウンドに関わる不動産事業およびツアー業、ウェディング事業などまで、その事業領域は幅広い。そしてグループネットワークにより、企画や土地の仕入れから、コンセプトの立案、ブランディング、インテリアデザイン、運営、広報まで、これらすべてをカバーできる体制を構築している。そのため、新規参入する事業者、デベロッパー、ハウスメーカー、土地や物件の利活用を考えるオーナーなどそれぞれのニーズに応じ、ゼロからの一気通貫でも、特定の領域のスポット的なサポートでも柔軟に対応できるのが特徴だ。
そうしたなか、アパートメントホテル事業は13年より直営事業、15年からはAirbnb公式パートナー企業として、アパートメントホテルと民泊に特化した運営代行サービスを提供することで拡大してきた。同社が運営するホテル28棟のうち26棟はアパートメントホテル。その規模は10~20室を中心に最大でも44室、1室の広さは平均約30㎡だ。残りの2棟は、カプセルホテル(98室)とビジネスホテル(113室)だが、アパートメントホテル以外の宿泊業態を運営する理由について、代表取締役社長の新井恵介氏は「異なる宿泊業態を運営することで、宿泊市場全体の動向を把握でき、これらで得たデータを基に、アパートメントホテル事業において行なうべき方策を客観的に検証することが可能になるためです」と話す。
同社は創業11年という若いホテルベンチャーながら、アパートメントホテル業界においては、その黎明期からいち早く事業を手掛け、牽引してきた〝フロントランナー〞といえる。そのため同社には、過去約10年分にも及ぶ訪日外国人利用客のデータが蓄積されている。「現在、当社の施設には年間約30万人の訪日客に利用いただいています。こうして得られるデータの分析を通じ利用者に適した価格帯やサービス内容など精度の高い対応を実現しているのが当社の強みです」と新井氏。
たとえばホテルを予約するタイミング1つとっても、2か月前から半年前など国によって傾向が異なるとのことで、それを踏まえ各国ごとに最適なマーケティング施策を実施、予約のタイミング、リードタイム、金額、キャンセルポリシーなどの要素を掛け合わせた数理的分析により、最も効果的なレベニューマネジメントを実現している。これは「国内ではあまり行なわれていない手法」と新井氏は自負する。
こうしたわが国におけるアパートメントホテルのパイオニアとして蓄積してきた運営ノウハウとデータを駆使した事業戦略によって、独自の経営スタイルを確立するに至っている。
2021年6月にオープンしたアパートメントホテル「hotel aima」。旭化成不動産レジデンス㈱が企画、カソクが運営管理を行なう
坪売上10万円、GOP70%、
平均稼動率98%を実現
同社の強みがどのような成果につながっているのか、具体的な物件事例をみてみよう。
2020年6月に東京都台東区東上野に開業したアパートメントホテル「hotel aima」(ホテル アイマ)は、旭化成不動産レジデンス㈱が企画した同グループ初のホテルで、カソクが運営を担う。さまざまな文化が交錯する上野エリアにおいて、街に暮らすように宿泊し、「日常と非日常の〝合間〞のホテル時間」を提供するというのがコンセプト。
6タイプ・全18室の客室面積は26~46㎡、定員は4~8人。賃貸住宅への転用可能性も視野に設計されており、全客室にバルコニーを付帯し自然採光にも優れる。冷蔵庫や電子レンジ、洗濯機のほか、独自のスタイルで人気の書店「文喫」が選んだ多彩な書籍も常備されている。
その稼動実績は、直近の数か月では客室坪当たり売上げが10万円超え、GOP(営業総利益)は70%、坪当たり7万円の収益を計上。さらに、ADR(客室平均単価)は3・4万円、OCC( 客室稼動率)97%、R e v P A R 3万円超と上野エリアにおいて突出した数値を叩き出している。こうした収益力は、「都内一等地のオフィスビルに匹敵するもの」(新井氏)で、カソクが運営する他の都内のホテルでもこれと同等、あるいは上回る収益をあげている物件もあるとのこと。
同社運営のパートメントホテルの平均稼動率は、国内最高水準の98 %で、これらの数字は、前述の卓越したデータ分析に基づくレベニューマネジメントやマーケティングの成果といえる。また、新築ホテルに関しては、土地、空間、ファイナンス、コンテンツ、マーケティング、運営、一連のデザイン設計を行なうことで、不動産価値と顧客体験価値を最大限に引き出していることにもよる。
「アパートメントホテルは、通常の賃貸マンションからの転用ケースが多く、建築やリノベーションの費用が軽微なのも特徴で、その結果、通常の賃料の3倍、4倍の収益をあげている物件もあります」と新井氏。
こうしたことから同社では当面はアパートメントホテル事業に注力していきたい考えで、「物件の開発においては、旭化成ホームズグループなど大手ハウスメーカー・デベロッパー・電鉄会社・不動産ファンドと協業しながら進めるケースがふえていくことになるでしょう」とする。
今後のアパートメントホテル市場の見通しにつき新井氏は「いまは過熱気味との見方もありますが、私はコロナ禍以前の19年を100とすると、最終的に150程度まで拡大するポテンシャルを有していると考えています」と今後の成長性に手応えを感じているようだ。
会社概要
会社名 | カソク㈱ |
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創業 | 2013年1月 |
代表者 | 代表取締役社長 新井恵介 |
本社所在地 | 東京都新宿区高田馬場2-1-2 |
事業内容 | コンサルティング ホテルの企画・開発・売買 ホテルの運営(リース・MC) |
TEL | 03-6273-9301 |
URL | https://www.kasoku.co.jp/company |