JTB

[システム]
●注目企業レポート  

PMSDXツールを連携
「共創」により経営効率化をサポート


PMS連携を実現し
DXツール導入をサポート
 
 ㈱JTBは、ホテル・旅館管理システム(PMS)と、自動チェックインや自動精算機など宿泊施設向けに提供される異なる事業者のDX等のシステムの連携を可能とする「JTBデータコネクトHUB」を開発、202211月にサービス提供を開始した。
 宿泊業界では、コロナ禍で経営に打撃を受け、人手不足も深刻化するなか、自動チェックインや自動精算などのデジタルソリューションの活用によって生産性を高めていくことが求められている。しかしながら観光庁の調査では、およそ9割の施設で、接客・サービス等のDXツールが導入されていないという結果もある。
 JTBでは、その原因として、PMSDXツールとの連携の部分が大きな障壁になっていると考え、PMS連携をより簡単に実現できるスキームとして、JTBデータコネクトHUBを開発した。DXツール上のデータをより有効に活用するにはPMSとの連携が不可欠だが、システム間をつなぐAPIを共通化することで、異なる事業者のシステムとのスムーズな接続を実現した[別図]。
 同システムは、それ単独で付加価値を提供するものではない。共創するDXソリューションを連携することで、従来できなかったDX化を実現していくものである。
 

[別図] JTBデータコネクトHUBサービスのイメージ

 
 
スマートチェックインや多言語対応等
フロント業務の軽減も実現
 
 では、どのようなことが可能となるのだろうか。たとえば、宿泊施設のチェックアウトの業務はどうしても時間が集中してしまいがちだ。インバウンド客が多い施設では精算も一苦労となる。そこで、JTBデータコネクトHUBを介して、Kotozna㈱と共同で開発した、施設内のどこからでも館内スタッフと母国語でチャットが可能な多言語コミュニケーションツール「KotoznaIn−room(コトツナインルーム)」とPMSを連携、同ツールのオンライン決済機能を活用することで、国内外すべての宿泊客が、ルーム内からスマートフォンで好きなタイミングで決済するスマートチェックアウトを実現した。
 チェックアウトの集中を回避することで、フロントでの負担の大きい業務が軽減され、限られた従業員のリソースを接客サービスに向けられる。従業員の働き方やすさにもつながり、従業員が辞めず、新しい人材獲得にもつながっていくだろう。
 宿泊客の側からも、非対面の接客に慣れているケースがふえていることもあって抵抗感も少なく、非常に便利との声が上がる。自動精算機を使う場合と比べても安価で導入可能で、リプレースがしやすいのも特徴だ。
 「いま、まさに、ニーズが急激に高まっている機能です。コロナ感染症が5類に移行した昨夏ぐらいから、インバンドの規制が緩和されたこともあってか、問合せがふえてきました。導入施設からは、非常に高い評価をいただいています」(エリアソリューション事業部 企画担当部長 蛯名匡実氏)。
 
 
外部のDXソリューションとの
共創によりホテル旅館の課題を解決
 
 JTBでは、同システムを核として、同社グループや外部企業のさまざまなDXサービスとの共創を図っており、その可能性は無限大だ。
 前述の「Kotozna In room」のような館内情報サービスや多言語のコミュニケーションツール以外にも、近隣施設の入場チケットや体験プログラムの予約、宿泊施設向けの決済サービス、他社のレベニューマネジメントシステム、ホテルの飲食の予約やルームオーダーなどでも連携がはじまっている。さらに新しい試みとして、清掃管理や顧客管理、営業サポート分析ツールなど、さまざまな連携の試みが検討されるなど、拡張、進化を続けているのだ。
 同社の提案するDXサービスの展開は、JTBデータコネクトHUB関連のサービスだけにとどまらない。もともと同社では、自施設のホームページにどうランディングさせるかの課題に応えるアナリティクス機能や、ホテル旅館の設備やサービスに対する問合せなどに生成系AIが対応して案内するDXツールもリリースするなど、宿泊施設の予約前段階のツールを数多く提供している。宿泊客が、泊まる前に体験プログラムを事前予約したいというニーズに応え、ホームページ上で予約し、販売、決済ができる機能も事業者・宿泊客双方に利便性が高い。
 「グループ内のツールを活用できるところは活用しつつ、なんでも自前でやりきるのではなく、JTBデータコネクトHUBを中心に、共創できるアライアンス先をどんどんふやしていき、宿泊施設のさまざまな課題にしっかり答えていきたい」と蛯名氏は語る。
 「JTBはいわゆるIT企業ではありません。私たちの強みは、旅行事業を中心として110年以上の長きにわたって、観光を一緒に築き上げてきた宿泊施設とのリレーションです。宿泊施設に携わるみなさまとのコミュニケーションのなかで、このサービスも開発したのです」(蛯名氏)。
 JTBは、「交流創造事業」を事業ドメインに掲げている。単にシステムを提供する会社としてではなく、交流を一緒に創造していくことを目的とするのである。今後も、宿泊施設とのリレーションを大切にし、業界内外のさまざまな企業とも共創していくことで、エリア・地域の持続的な発展への貢献を目指す。
 


[CASESTUDY]

観光地のホテルでのDX
業務効率化、収益最大化に取り組む

 

草津温泉 ホテル一井
営業統括部 部長 齋藤恵太

 
ホテル一井は、草津温泉のシンボルである湯畑前にかまえる温泉宿です。湯畑からは毎分4,600リットルの湯が湧出、硫黄の香りと湯けむりとともに、湯脈つきることなく温泉が流れています。草津温泉の湯畑に刻を紡いで、江戸時代の創業より三百余年。「一番井戸の一井」と親しまれ、古くから変わらぬおもてなしの心と、「一番」の「一」の心意気を伝えてまいりました。
 
ようやくコロナ禍がひと段落し、人流回復が見込まれるなか、ホテル業界では人手不足が深刻化しております。そこで、生産性向上を目的に、新たなテクノロジーやデジタル・DX活用を検討していました。特に、国内のお客さまのみならず、訪日インバウンドのお客さまも増加するなか、さまざまな宿泊プランに対し、需要予測や過去実績などを適切に分析し、料金プランを検討することにかなりの時間を要していたのですが、そんななかでリクルート社の「レベニューアシスタント」の導入提案を受けました。このリクルートの「レベニューアシスタント」は、ホテル・旅館管理システム(PMS)と毎日連携してデータを取得することで、高い精度の需要予測を行ない、また簡単に売り方を変更することが可能となるサービスです。PMSとの連携が鍵となるのですが、JTBの「JTBデータコネクトHUB」を介することでさまざまなPMS連携が可能になるという提案をいただきました。JTB×リクルートによる共創が実現できたことで、レベニューマネジメントツールを導入することができました。
 
まだ使い慣れていない部分もありますが、需要予測や過去実績などの収集したデータを利用し、予約件数やキャンセル数も加味したうえで最適な料金提案を少しずつ反映していきたいと思っています。導入前には期待と不安がありましたが、想像以上に便利だと実感しています。機能を理解していきながら、業務効率化や収益最大化につなげていけるのではと考えています。
 
今回、JTBとリクルートによる共創が実現できたことで、有効なDXソリューションを導入することができました。JTBは旅行会社というイメージが強かったのですが、PMSを含めて宿泊業界に寄り添いながらサポートいただいています。今後も、お客さまのニーズに合わせて、生産性向上や収益最大化に向けたテクノロジーを活用できるよう期待しています。
 

 

会社概要

会社名

㈱JTB

本社所在地

東京都品川区東品川
2-3-11 JTBビル

設立

1963年11月

資本金

1億円

代表者

山北栄二郎

URL

https://www.jtbcorp.jp/jp