SQUEEZE

[システム/ホテル経営]

●注目企業レポート 

施設全体のデジタル戦略を支援
宿泊業界におけるDXの旗振り役に


直営事業の実績強みに
パートナー企業のDXをサポート
 
豊富な観光資源と円安効果によって、国内のインバウンド需要は回復基調にある一方、その受け皿となるホテル業界は、低賃金かつ負荷が大きい業務内容や最新テクノロジーへの転換の遅れといった課題を抱えている。
 
「宿泊業界はインバウンド需要で市場が盛り上がってはいますが、明らかに需要が先行し、オペレーションがついていけていません。私たちは、観光立国という考えに強い刺激を受けて民泊事業からスタートしたベンチャーとして、そのオペレーションの部分をよりよくするお手伝いができればと考えています」。
 
そう語るのは、2014年の創業以来、ホテル業界における旧来型のオペレーション業務を1つひとつ分解し、再設計に取り組んできた㈱SQUEEZE 代表取締役CEOの舘林真一氏。同社がオペレーション・テック企業としてホテル業界で具現化してきた成果は多岐に渡る。
 
たとえば、独自ブランドの直営事業として17年に大阪に第1号がオープンした「Minn(ミン)」は、家族や友人、グループ客といった多人数で泊まれる長期滞在型のアパートメントホテルとして、急増するインバウンドの受け皿となっている。客室にキッチンやランドリーを備え「第2のマイホーム」のような空間が特徴で、現在全国で22施設が稼動。24年もさらに複数棟の新規開業を予定する。
 
また、シアターとホテルを掛け合わせた宿泊施設「Theatel(シアテル)」は、「泊まれる映画館」のようなホテルとして注目を集めたほか、京王グループとの業務提携では、20室以下のコンパクトホテルの事業領域を開発。小型不動産・狭小地活用、まちづくりや沿線沿いの活性化を目的とした不動産のバリューアップに成功している。
 
特に話題となったのが、北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」(北海道北広島市) のレフトスタンド後方に建つ「TOWER11」におけるホテル・温浴施設の運営だ。世界初の野球場が一望できる宿泊施設・温浴施設の運営に企画段階から参画したもので、その実績が評価され、他の新規プロジェクトでも引き続き運営事業者として参画する予定となっている。
 
このほか、JR東日本グループが展開するスマートホテルの新しいブランド「B4T」では、同社が提供する宿泊運営システムとモバイルチェックイン機能を活用。ここでは、日本初の取組みとして、Suicaスマートロックをホテルのルームキーとして採用したほか、自動精算機やロッカーとの連携機能を開発。ほかにも、テクノロジーを活用した損益分岐点の低いクラウド型ホテルへのバリューアップ事例や、後述するクラウドコンシェルジュを活用したオペレーションの最適化など、宿泊事業の新しいスタイルをつぎつぎと形にしている。
 
舘林氏は、「ホテル運営受託、システム提供からDX全体のコンサルティングまで、その携わり方はさまざまです。当社は自らのブランド力を高めていくというよりも、地域活性化やまちづくりの一機能を担う宿泊施設において、ソリューションやオペレーションを受け持つ〝緑の下の力持ち〞としての実績をもっともっと積み上げていきたいと考えています」という。

直営のアパートメントホテル「Minn」

JR 東日本グループのスマートホテル「B4T」など、DXパートナーとしてホテルオペレーションの最適化をサポート

 
「クラウドコンシェルジュ」で
フロント業務を大胆に省力化
 
同社が宿泊事業でさまざまな企業との連携を図ることができた背景には、同社に対する市場からの高い評価がある。DXを推進するソリューションパートナーとして、空間活用の企画・構想から、システム導入・オペレーション設計、実際の運営の細部に至るまで、それぞれのケースに応じた支援で実績を積み重ねてきた。
 
その核になるのが、自社開発のクラウド宿泊管理システムとクラウド運営チーム「オンラインコンシェルジュ」だ。従来、施設ごとに常駐していたフロント機能の共通業務をクラウド上に集約。チェックイン業務や電話による問合せといった煩雑で時間のかかる作業はクラウド運営チームが遠隔からオペレーションし、本部スタッフや現地スタッフは付加価値の高いコア業務に専念することでオペレーションの最適化を図っている。そのクラウド運営チームもまた、同社の海外子会社(カンボジア)のオペレーションセンターや国内外の在宅ワーカーで構成。時間や空間にとらわれないクラウドコンシェルジュとして、24時間対応や多言語対応、複数ホテルの対応を可能にしている。
 
舘林氏によると、人手不足が深刻化するなかにあって、正社員でも23か月の研修期間を要するホテル業務のあり方自体が大きな課題だととらえる企業がふえており、パート・アルバイトスタッフでも15日で操作方法習得でき使いこなせ、しかも携帯やモバイル端末でも管理できる同社システムへの評価は高い。
 
こうしたDXの推進に必要なことは、ホテル業務自体の分解と再構築だと舘林氏。「特に重要なのが、事前にできるものはどんどん前にもっていこうという考え方です。たとえば、チェックインでフロントにたくさんの人が並ばないようにするには、事前にパスポートなどの必要なデータをアップロードし、事前決済、事前チェックインの仕組みをつくればいい。ゲストに事前にある程度のことをやっていただくことで、フロントスタッフの負担も減るのです。フロントで行なう10のプロセスのうち、事前に9まで終わっていれば、現場では1の作業でいい。そういう発想です」。
 
こうしたクラウド型ホテルの構造にすることで人件費を最適化し、新規開業の立上げや売上げ向上業務などのコア業務にリソースを振り向ける。舘林氏は、同社がそれまでの属人化されたアナログなオペレーションから脱却し、生産性の高い施設運営を目指すDXをホテル業界全体で推進する旗振り役を担っていきたいという。

 
温浴施設の運営も経験し
事業領域の拡大にも意欲
 
同社ではこれまでの事業で培ってきたさまざまな経験を活かし、今後は宿泊にとらわれない空間活用の企画・提案も積極的に行なう考えだ。
 
たとえば、先に触れた「TOWER11」におけるホテル・温浴施設の運営で得た経験値の応用がこれに当たる。同社のクラウド運営ソリューション事業部でホテルマネージャーと事業開発北海道責任者を務める中田聡喜氏は、「運営の基礎をつくるところからのスタートでしたが、1年間で大きな手応えを感じています。一方で、予約から実際の利用までのリードタイムの違いや当日予約の対応、試合日とそうではない日での人の動きの違い、ダイナミックプライシングなど、宿泊ビジネスとは違う要素もあり、実りの多い1年でした」
と振り返る。
 
ここで得た経験は、同社が展開する温浴施設を取り入れたホテルの運営にすでに活用されはじめているが、舘林氏は、「ホテルに限らず、集客があり、チェックインがあり、滞在、チェックアウト、清掃、リマーケティングという一連の業務範囲でいえば、温浴施設はもちろん、クルーズ船などにも応用できそうです。当社が対応できる不動産の空間オペレーションは、かなり幅が広がっていると感じています」と語り、事業領域の拡大にも強い意欲を示している。

「エスコンフィールドHOKKAIDO」では温浴・サウナ施設の運営にも挑戦。業容を広げる契機となった ©H.N.F.

 

会社概要

会社名

㈱SQUEEZE

本社所在地

東京都渋谷区神山町6-4
ARCHES KAMIYAMACHO3階

設立

2014年9月1日

資本金

4億6,842万6,300円(資本準備金含む)

代表者

代表取締役 CEO 舘林真一

事業内容

不動産バリューアップ、ホテル運営ソリューション、街づくり・DX企画

URL

https://squeeze-inc.co.jp/