2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を一つの契機とし、スポーツ産業の振興やスポーツを通じた地域・経済の活性化への機運が高まっています。一方、わが国のスポーツは教育の一環として発展してきた経緯もあり、プロ野球やJリーグなどの一部のプロスポーツを除けば「みるスポーツ」ではなく、「するスポーツ」に主眼が置かれてきました。そのため、その受け皿となるアリーナ・体育館などは、「みるスポーツ」施設としては十分な機能をもってこなかったのが実情です。
こうしたなか、2016年2月、スポーツ庁と経済産業省は、オリンピックイヤー後も見据えたわが国のスポーツビジネスの戦略的な方針を策定するため「スポーツ未来開拓会議」を立ち上げ、スポーツ産業振興に向けての取組みを開始しました。16年6月に発表された中間報告では、アリーナやスタジアムなどのスポーツ施設の収益モデルを確立し、従来の「コストセンター」から「みる」の観点から高付加価値を提供し収益を得ることのできる「プロフィットセンター」への転換が提言されています。
また、欧米などのスポーツ先進国では、アリーナやスタジアムを中核として公共施設や商業施設などを複合したまちづくり(スマート・ベニュー)が実践されはじめています。これまで十分な敷地を確保するため郊外に建設されるケースが目立ちましたが、少子高齢化が進展するわが国においても中心市街地の空洞化に伴うコンパクトシティ化が求められており、まちづくりの起爆剤として大きな期待が寄せられています。
本書では、アリーナビジネスのマーケットの現状や最新潮流を整理するとともに、これまでの問題点や課題への対応、さらには今後求められる新しい時代のアリーナ施設の開発・再生・運営手法について詳解いたします。 |