社会保障制度の改革が急ピッチで進められるなか、高齢者施設・住宅を巡るM&Aや金融機関あるいは投資ファンドからの投融資も活発化しつつあります。すでに既存の大手・中堅オペレーターはもちろん、異業種からの新規参入においては、施設数の急増による競争激化や総量規制などの影響から、事業展開の戦略上、M&Aの手法を使って事業拡大を図る事例が見込まれるとともに、有料老人ホーム・高齢者住宅等について不動産証券化の手法を使って金融機関や投資ファンドから資金調達を行う事例も増えつつあります。
しかしながら、入居者たる高齢者が長期に渡り生活を続ける高齢者施設・住宅のM&Aにおいては、既存入居者が入居条件を大きく変えることなく居住することを前提に取引を検討する必要があり、他産業のM&Aとは異なった観点からステークホルダー間の調整や価値算定を行う必要があります。さらには、当該事業の事業性や事業価値の見極めにあっては、入居者コミュニティ・属性の状況、施設運営方針、入居一時金を含む料金体系など事業面に大きく踏み込んだ検討が必要となります。
本書では、高齢者施設・住宅のM&Aおよび投融資を成功させるために必要な事業・財務デューデリジェンスのポイントやM&A交渉上の留意点、および関連する法務・金融実務についても分かりやすく解説しています。また、高齢者施設・住宅等のシニア施設の資金調達市場、不動産流動化市場の現況と取引手法についても解説します。 |